花暦 夏の野に貴婦人のごとく凛と咲く花~「百合」
華麗に咲く満開の山百合
洋花のイメージが強いですが、山百合をはじめとして日本特有の品種が今も各地で自生しています。古くは鑑賞用としてより薬用としての効果に注目されていました。今では品種改良が進み、世界で百数十種類の百合が観賞用として親しまれています。
雨あがりにすっくと立つ姿はまるで貴婦人…そんな百合の見ごろはこれから…今年は観賞用として、さらに古来にならって薬用としても百合に改めて注目してみませんか。
薬用としての百合は、花も根もまるごと女性に優しい
現存する世界最古の薬局…Santa maria noverra(サンタマリアノベッラ)
サンタマリアノベッラ・フィレンツェ
ここでエピソードを一つ。当時のトスカーナ大公であるメディチ家から、フランスのアンリ2世へ嫁いだカテリーナのために、Santa maria noverra(サンタマリアノベッラ)が「王妃の水」を作りました。これがオーデコロンの起源とも言われています。フィレンツェからフランスに嫁いだカテリーナがSanta maria noverraをヨーロッパへ広め、ヨーロッパ諸侯の評判もめでたく、Santa maria noverraはメディチ家から王家御用達の称号を受けました。フランスにフィレンツェから嫁いだカテリーナがいたからこそ、ですね。当時のフランス王家の紋章は百合(フルール・ド・リス)、今では国の花となっています。
Santa maria noverraは、今では「王妃の水」以外にもローズ、アイリス、リリーなど…香りの種類が多岐にわたるようになりました。
汗をかく季節です。元祖ともいえるハーブウォーターのラインに「リリーウォーター」があり、百合の効能を堪能することが出来ます。香りで癒され、お肌を引き締め、ハリを与えてくれる…洋の東西を問わず、女性に優しい花「百合」を楽しみましょう。
百合の品種は世界100種以上、そのうち日本特産はというと…
緑に映えるニッコウキスゲ
日本では、おせち料理にあるようにゆりねを食す習慣はありましたが、花として鑑賞するのは山野の散策の折くらいだったようです。今もこの時期、少し山へ分け入っていくと、山百合や笹百合に出会うことができます。
県の花でもある神奈川県の箱根湿性花園では、ニッコウキスゲが見ごろを迎えています。7月に入ると山百合や笹百合、8月にはコオニユリ…と続々と咲き続けます。ぜひ、折々の花を愛でに出かけてみたいですね。
可憐な色と風情の笹百合
百合の特徴の一つにはその香りの強さがあります。だからこそ、様々なフレグランスに応用され、ヨーロッパを中心に人気を博したのだと思います。残念ながら、日本の文化には茶道や和食など、強い香りをよしとしないため観賞用としての品種改良が進まず、現在では百合というと洋花と思いがちです。でも、その花たちの中にも日本の特産品種がもとになっている可能性が高いのです。この夏は、百合の効能を視覚・きゅう覚・味覚で楽しみ、今までより身近に感じて、生活に取り入れてはいかがでしょうか。
《参考》
箱根湿性花園
季節の花300
Santa maria noverra(サンタマリアノベッラ)