冬の青菜は甘くて美味しい! 秘密は寒さに耐えたからって、ホント?

冬の青もの野菜の代表といえば「小松菜」

雪と小松菜
《小松菜のあをのしづめる祝ひ膳》 藤村克明
最近では広くハウス栽培が行われるようになり、1年を通してスーパーや八百屋の店先で目にする「小松菜」ですが、本来旬は冬です。寒さにも強く冬でもよく育つので「雪菜」や「冬菜」とも呼ばれ、青い野菜が不足しがちな冬の食卓では重宝な食材として大きな役割を果たしています。食してみればやはり旬の味わいは格別です。
《たっぷりの日差し吸ひ込み冬菜畑》 永井梨花
《月光に冬菜のみどり盛りあがる》 篠原梵
大地が枯れたように寂しい時、畑に緑を溢れさせてくれる「小松菜」の存在は、人々の心にも明るいものを投げかけているようです。
春へ、ほんのり紅色をもつ「ほうれん草」がつなぎます

根っこの紅いほうれん草
それは霜や雪にあたるからと言われています。野菜も寒さを乗り切るために頑張ります。寒さの中で凍ってしまうと野菜の細胞が壊れてしまいます。凍結対策は細胞内に糖分を溜めることだそうです。糖度があがれば甘さも増しますね。
洗いたてのほうれん草をそのまま食べてみました。特に茎の部分には予想外に甘味があり、これが冬野菜の旨味なのだと実感できました。
根っこが紅色、これも「ほうれん草」のちょっとした魅力ではないでしょうか?
《はにかみを根っこに溜めし菠薐(ほうれん)草》 森川光郎
「ほうれん草」実は春の季語なんです。雪の中に顔を出すのに春とは、とちょっと驚きました。思い出したのは八百屋さんの店先を眺めていた時のことです。小松菜のとなりにほうれん草が並び始めたとき、紅い根っこが目に飛びこんできて、なにやら華やいだ気分になったのです。冬の「小松菜」から春の「ほうれん草」へまだまだ寒さは続きますが、すこしずつバトンタッチが行われていたのだな、と。どちらも私たちの健康をしっかりと守ってくれる頼もしい野菜たちです。
色鮮やかな青菜を美味しく食べよう

スモークサーモンとほうれん草のパスタ
《鍋蓋に丈のはみだすほうれん草》 高沢昌江
葉と茎では茹であがり時間も変わってきます。ほんの少し気を配り手をかけることで、野菜の歯ごたえを生かした仕上がりにすることができそうです。
《削り節をなか高に盛りはうれん草》 有賀昌子
おひたしや炒めものといった単品でも十分に美味しいのですが、緑色を生かすのはやはり取り合わせる食材の色。卵の黄色、茸類や豆腐の白、トマトの赤などは青菜と合わせることで見た目にも彩りのよい一皿ができあがります。
《匂ひ立つ若菜のパスタ赤ワイン》 白勢一間
若菜とともに匂い立つのは春の息吹かもしれません。深みのあるワインの赤も青菜と相性がよさそうです。
《はうれん草の紅ほの甘き夕餉かな》 小田明美
「ほうれん草」の根っこ、色ばかりかほんのりとした甘さまでも生かした夕食に喜びと満足が伝わってきます。今が旬と出まわる「小松菜」と「ほうれん草」、春へと私たちを元気よく連れていってくれそうです。
参考:
◆農林水産省 広報誌「aff 2023年1月号」
◆農林水産省 広報誌「aff 2019年12月号」