東日本大震災で活きた防災教育「津波避難の三原則」 釜石市の児童から学ぶ生き抜く力
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)
「津波の高さ」と「遡上高」
気象庁が津波予報で発表する「津波の高さ」は、海岸付近での津波の高さを指します。
一方で「遡上高」は、津波が陸地を駆け上がった際の高さのことで「遡上高」は海岸付近での「津波の高さ」の2倍〜4倍にも達することがあり、V字谷のような特殊な地形の場所では更に高くなることがあります。
津波予報で、予想される津波の高さが数十cmと発表されても、場所によっては1m以上の高さまで津波が到達する場合があります。決して油断せず、津波予報発令中には迅速な避難行動を意識しましょう。
出典:気象庁ホームページ 津波発生と伝播のしくみ
釜石市の防災教育「津波避難の三原則」
東日本大震災の大津波が東北地方の沿岸部に甚大な被害を及ぼした中、岩手県釜石市内の児童・生徒の多くが無事であった事例が「釜石の出来事」として記録されています。
これは群馬大学大学院の片田敏孝教授が提唱する「津波避難の三原則」を忠実に実行した結果であったと言えます。
津波避難の三原則
第一「想定にとらわれるな」
第二「最善をつくせ」
第三「率先避難者たれ」
津波避難の三原則「想定にとらわれるな」
例えば各地域で作成している「ハザードマップ」等に記載されている警戒情報は、「あくまで予想」と考えるべきです。端的に言えばハザードマップを信じるなということになります。ハザードマップを見ても意味がないというわけでは決してなく、ハザードマップで例えば自宅が浸水想定区域から外れていても、決して油断するな。という意味です。なぜならば、ハザードマップに示される通りに津波がくるとは限らないからです。自分で状況を把握し、行動することが大事です。相手は自然でありどんなことが起こるか分かりません。自分の居る場所がハザードマップでは安全と判断される場所であっても油断しないことです。
津波避難の三原則「最善をつくせ」
釜石東中学校では、地震後の停電のため、校内放送での避難の呼びかけができなくなりましたが、危険を察知した生徒たちが「逃げろ!」と大声で声をかけあったことで、日頃から一緒に避難訓練をしていた中学生が一斉に避難し、その様子を見て、隣の小学校の児童らも、また、近隣住民も即座に避難することにつながったそうです。保育園児らの避難を中学生が手伝いながら、できる限りの高台を目指したそうです。ハザードマップの想定にとらわれて避難所を決めていたら、とても生き延びることができないところまで津波が迫っていたのです。
津波避難の三原則「率先避難者たれ」
これは、正常性バイアス(自分にとって不利な情報は無視するという人間の基本的な心理特性)という心理が関係していて、なかなか避難するという行動に移せずにとどまってしまうそうです。
ただ、津波は少しでも避難を躊躇すれば、犠牲になってしまいます。自分が「率先避難者」となり、いち早く行動することで、周囲も同調して避難する。結果みんなの命が救われる。ということにつながるという教えです。
釜石市の津波防災教育のように、自然とどう向き合うべきか、日頃からその姿勢を育む教育や訓練によって、生き延びた命があります。地震などの危機にどう立ち向かうべきか想定しておくことはとても大切であると感じました。災害発生時はほとんど行動ができなくなると考えて、安全なうちに、まずは、自宅の防災について考え、整えておくことから始めておきましょう。
出典:内閣府ホームページ 津波から命を守る
参考文献 特定非営利活動法人 日本防災士機構 防災士教本より引用