「アンタレス食」に「中秋の名月」。秋の夜空を彩る月を楽しもう
今回は、9月に注目したい星空情報をご紹介します。
【9月4日】東の空で、夜半の明星・木星と月が共演
画像:国立天文台
衝とは外惑星が太陽と正反対の位置にくる瞬間のことで、最も地球に近付いて明るく見える時。この時期の木星は、太陽が沈む頃に東の空から昇り、日の出の頃に西の空に沈むため、一晩中見ることができます。
4日の宵から5日の明け方にかけて、月齢19の半月よりも少しふくらんだ下弦前の月が木星に接近します。5日の夜明け前、月と木星は南の空高くに移動し、東の低空には明けの明星・金星も姿を見せ、華やかな眺めになるでしょう。
【9月21日】月がさそり座の一等星アンタレスを隠す「アンタレス食」
画像:国立天文台
月は地球から見ると西から東へと進み、約1か月で空を一周しています。月が背後に広がる星空を横切って移動する時、恒星を隠す現象を月による「星食」、または「掩蔽(えんぺい)」といいます。1等星などの明るい恒星の星食は肉眼でも観察しやすく、隠す天体の名をとって「○○食」と呼ばれています。
アンタレスが月に隠される「潜入」は、21日の日没前の17時過ぎに起こります。アンタレスは月の暗い部分(暗縁)から隠されますが、まだ空が明るいため、潜入の様子を観察することは難しいでしょう。ぜひ観測したいのは、アンタレスが月の背後から現れる「出現」の様子です。日没後の18時30分過ぎに起こり、アンタレスは月の明るい部分(明縁)から姿を現します。恒星は点像にしか見えないため、出現は一瞬の出来事。出現の瞬間を捉えるには、予報時刻の少し前から観察を始めることがポイントです。肉眼でも観測可能ですが、双眼鏡や望遠鏡を使用するとより見やすくなります。
潜入・出現の時刻や月の高度、月とアンタレスの位置関係は、観察場所によって異なります。事前に確認してから観測に臨みましょう。
★おもな都市の潜入と出現の時刻
国立天文台「アンタレス食」
【9月29日】満月と一致する「中秋の名月」。次回は7年後
画像:国立天文台
旧暦では新月の日を朔日(1日)としていました。そのため、月の満ち欠けの中間点にあたる15日が満月になると考えられていました。実際には、月の公転軌道は楕円形で、新月(朔)から満月(望)までの日数は13.9日から15.6日と変化があります。そのため、中秋の名月は必ずしも満月になるとは限らないのです。
今年の中秋の名月の日は、3年連続で満月の日付と一致します。満月の瞬間は19時頃のため、宵に昇ってくる名月がまさに満月になります。次回、中秋の名月と満月の日付が一致するのは、7年先の2030年9月12日です。しばらく見ることができない満月の中秋の名月。今年のお月見は、明るい光を湛えた丸い月をゆっくり眺めたいですね。
・参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2023』 アストロアーツ
・参考サイト
国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2023年9月)」