夏の訪れを告げる「金時草」 ~アントシアニンも豊富な加賀野菜~
グルメ
6月に入ると、金沢では野菜売場に「金時草(きんじそう)」が並びます。熊本では「水前寺菜(すいぜんじな)」、沖縄では「はんだま」、愛知県では「式部草」とも呼ばれる伝統野菜ですが、それ以外での土地では殆ど流通していないようです。葉の表側は緑色、裏側は赤紫色。茹でるとワカメの様にヌメリが出ます。強いアクも苦味もなくて食べやすい上、健康に良いとされる成分が豊富。夏バテ予防にも、紫外線からのダメージ対策にも効果があるという金時草。機会があれば、是非お試し下さい。
金時草の栄養価および効用
30代女性が1日に推奨される食事摂取基準を1とした時の、各野菜100gあたりの成分値
金時草の紫色は「アントシアニン」。ポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用を持つことで老化防止、免疫力向上、眼精疲労の改善などの効果があるとされている成分です。金時草のヌメリ成分は「粘液糖タンパク質の混合物」。粘液糖タンパク質の混合物は血糖値や血中コレステロールを下げたり、血液をサラサラにする効果、粘膜保護作用、抗ウイルス作用、細胞活性作用などの効果があるとされています。気持ちを落ち着かせるなど、抗ストレス作用のあるGABA(Gamma Amino Butyric Acid:ギャバ)も豊富だとか。他にも、カルシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンCなどが含まれており、疲労回復や風邪の引き始め、貧血、イライラ、骨粗鬆症、夏バテ防止などに期待できそうです。
全国的に入手しやすい小松菜とほうれん草の成分を金時草と比較してみましょう。右上のグラフは、30代女性が1日に推奨される食事摂取基準を1とした時の、各野菜100gあたりの成分値を表したものです。ビタミンCは小松菜の半分もありませんが、大したことないと思うなかれ。これでも「りんご」の4倍も含まれています。鉄・ビタミンB2も小松菜・ほうれん草よりやや少ないのですが大きな差はありません。カルシウムとビタミンAは金時草が一番多く、ビタミンAに関しては摂取基準の60%近くもあることが分かります。
金時草の食べ方
最も一般的な食べ方は、お浸し(酢の物)。調理方法も簡単で、金時草らしさを味わえます。他にも、天ぷら、炒め物、味噌汁、散らし寿司やゼリーなど、料理のバリエーションは工夫次第で広がります。
<お浸しの調理法>
1.太い茎から葉へ枝分かれしている箇所で、ポキポキとちぎります。
2.沸騰したお湯に葉をサッと入れて茹でます。
3.ザルにあけ、冷水で軽く洗います。
4.水気をしぼったら、食べやすい大きさに切り、器に盛り付けます。
5.お醤油に加えて酢をかけるのがお勧め。青紫色から鮮やかな赤紫色に変化し、すっきりとした味わいになります。二杯酢、三杯酢、ポン酢でもどうぞ。
残った茎は?
実は、金時草の茎を水に挿しておくと、2週間ほどで根が出てきます。発根(はっこん)を確認したら、プランターやポットに土を入れて、根が出た茎を植えてみましょう。暑さには強いのですが、乾燥に弱いので、水やりを忘れずに。葉が茂ったら摘んで食べましょう。葉を摘んでも次々とわき芽が出てくるので、うまくいくと冬になるまでずっと収穫できます。
※例年ですと1束が300円程度の金時草ですが、6月現在、小売価格は1束700円程の高値となっています。そのため、金沢市内のスーパーでは店頭に並んでいない状況です。今後、出荷数が増え、例年のように流通して欲しいと願っています。
●2018年5月29日記事の一部を修正をしました。
石川県金沢市出身。辞書マニア。その所有数は、百科事典を含めると100冊を超える。毎日かけているメガネのフレームは、昭和時代から使い続けている。20リットルの家庭ゴミを10リットルのゴミ袋に詰め込むワ...
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