二十四節気「処暑」。萩の風に、虫の歌に夏の終わりを感じるころ
陽熱ふたたび来たりて、退くにはしばし待たれよ
ところが今年は例外中の例外。立秋のころから雨が多く、気温が低い地域も多かった。それなのに、処暑である今日から猛暑がぶり返すという予報も出ています。
しかし、酷暑の日々も、あともう少しの辛抱でしょうか。昼間の蝉の声に夕暮れ後の秋の虫たちの声、一日中虫たちが騒々しいまでに歌を競い合うこのごろ。庭先でやさしく枝を揺らす萩も盛りを迎え、涼しい季節の到来を告げています。今時分はまた、暴風雨にも見舞われやすい野分(のわき)の季節。くれぐれも天候の急変や雷雨にはご注意を。
過ぎゆく季節。萩の風何か急かるる何ならむ
~萩の風何か急かるる何ならむ~
これは、萩を題材とした水原秋桜子の句。野分が吹かせる風に急き立てるように去り行く夏を、どこか思わせる一句です。
また、萩は古くから日本人に愛されていて、万葉集に登場する160種の植物中、最も多く歌に詠まれているのだとか。なかでも大伴家持には16首もの萩の歌があるそうです。
~高円の野辺の秋萩このころの あかとき露に咲きにけむかも~
萩の名所として名高かった高円山を望みながらでしょうか。家持が、明け方の露にうながされて咲いただろうかと思い描いた萩の花。今は庭に植えられ咲く萩を見つめれば、かつて同じ花が山や野、原や丘でたくましくも涼やかに風に揺れていた、万葉のときへ誘われるようです。
数珠たぐる京の夏の終わりを告げる地蔵盆
六道で苦しむ人々をも救済してくれるという、たいそう慈悲深い地蔵菩薩。子供を守ることから、同じ時期に行われる地蔵盆は、子供中心の行事になっています。
町の辻に祀られたお地蔵さまをきれいに飾りたて、子供に菓子をふるまったり、子供たちが長い数珠をたぐったり。この地蔵盆が終わったら、新学期まであと少し。夏の最後の思い出に興じる子供たちを、お地蔵さまが優しく見守ってくれるのです。