てんとう虫って目立ちますよね。なぜ鳥に食べられないの!?
私を食べるとたいへんなことになりますよ
世界のラッキーシンボルですから♪
これは、危険を感じたてんとう虫の足の関節から出る液体。有毒のアルカロイドを含んでいて、強い苦味もあります。てんとう虫を食べようとした鳥は、あまりのまずさに吐き出して「死ぬかと思った。二度と食いたくない!! 」(←この様子が「苦虫を噛み潰す」の由来ともいわれています) と学習。つまりてんとう虫は「そのまっずい虫はココにいま〜す!」とアピールすることで、自分が食べられないようにしているというのです。甲虫なのにソフトな体、素手でつまめるくらいのんびりした動き、すべてが「じゃあ食べてみれば?」という自信からきているらしいのです。
アメリカの記録では、ムクドリの親がヒナのために3年間に運んだ昆虫約1万6500匹のうち、てんとう虫はたったの2匹だったという報告も。ジョロウグモなどは、巣にかかっているのがてんとう虫だとわかったとたん急いで逃げだしてしまうのだとか…。実際に噛み潰してみたという生物学者・盛口満先生によると「15分くらい唾を吐き出し続ける結果となった」というくらい強烈な苦味のようです。それでクロボシツツハムシのように、てんとう虫そっくりの模様(体型は多少細長いのですが)で保身する虫まで。ただし、てんとう虫ももちろん無敵というわけにはいかず、幼虫のときヤドリコバチやハエなどに卵を産み付けられ寄生されたりするそうです。
益虫として活躍中!ところで幼虫ってどんな姿?
ナナホシテントウ。脱皮が進むとオレンジ色の模様が出現
春と秋のエサ場では、オスとメスが運命の出会いと交尾を展開。一週間ほどすると、メスはエサ場の木の枝や茎、葉の裏などに30〜40個の卵をまとめて産み付けます。卵は3〜4日で孵化し、毛むくじゃらの幼虫が出てきて、だんだん黒く変化します。しばらく待って体が乾いたら、いよいよエサを求めて出発です。
てんとう虫は、親も子も同じものを食べて暮らします。産卵場所を選んでくれたママのおかげで、ちょっと歩けばエサ(アブラムシ)が! 幼虫は小さいくせに鋭いアゴをもっていて、自分と同じくらいの大きさのアブラムシに食いつき、(ママと同じように)体の中身を吸いとります。しかもお尻に吸盤がついていて、葉の裏や端っこまでアブラムシを逃さず追跡。もしエサが足りなければ、一緒に生まれたきょうだいだろうが、まだ孵っていない仲間の卵だろうが容赦なく食べてしまいます。脱皮を繰り返しながらだんだん大きくなり、やがてサナギを経て成虫に。
「害虫」のてんとう虫には毛がはえています
オオニジュウヤホシテントウのカップル(交尾中)
じつはてんとう虫は、みんな肉食系ではありません。なんと日本だけでも約180種類ものてんとう虫がいるといい、虫を食べるもの・コケを食べるもの・植物を食べるものにざっくり分けられます。なかでも草食のニジュウヤホシテントウなどは、集団でナスやジャガイモの葉をもりもり食べるため、害虫として扱われます。もちろん幼虫(←トゲトゲ)もベジタリアンです。
といっても、外見はそんなに違わないような? 害虫と見破る方法はあるのでしょうか。もっともわかりやすいのは、ニジュウヤホシテントウの翅は肉食のてんとう虫のようにツヤツヤしていないこと。表面にこまかいうぶ毛が生えているからなのです。畑で見かけたときは確かめてみてくださいね。
呼び名の由来は神聖な「神さまの虫」!
成虫のままあつまって越冬。みんな同じナミテントウだなんて
<参考>
『テントウムシ』佐藤有恒(あかね書房)
『テントウムシの島めぐり』盛口満(地人書館)