もう初夏なのに?! 七十二候「竹笋生(たけのこしょうず)」。
いま生じるのは○○○なんです!
春の味覚は外来種
黒っぽく毛が生えた皮も勇ましい孟宗竹
それほど季節感を重んじるタケノコ食なのに、いま「生ず」といわれても。なんだかズレている気がしませんか・・・と思っていたら、なんと日本原産のタケノコは、今が旬だったのです!
3月〜4月に収穫され 私たちが「春の味覚」としているのは、『孟宗竹(モウソウチク)』という種類。これは17〜18世紀に中国から日本に入ってきたといわれる外来種なのです。大型肉厚でエグみが少なく、独特の上品な甘い風味から現在食用の主流となっています。
一方、日本の竹で有名な『真竹(マダケ)』の収穫時期は、5月から6月にかけて。七十二候の今の時季ですね。別名「苦竹(ニガタケ)」と呼ばれ、収穫して時間が経つとエグみが強くなるためアク抜きが不可欠に・・・そんな事情もあってお店ではあまり見かけませんが、とれたてはエグみがほとんどなく、そのままお刺身で食べられるほど美味絶品といいます。孟宗竹よりさらに食べ頃が短い、貴重な味覚なのですね。
ちなみに「旬」という字は「じゅん」と読み、月の上旬・中旬・下旬というように「10日間」を指す言葉なのだそうです。10日間くらいで「竹」になってしまうほど成長が早いから『筍』になった、ともいわれています。
『竹取物語』のおじいさんの職業は?
おじいさんのおべんとう↑(イメージです)
「かぐや姫」に出てくるのは日本古来の竹です。「竹取」というのは職業名。かぐや姫を育てたおじいさんは、竹細工を作って生計を立てていたのですね。
その仕事の身分は低く、生活は貧しかったといいます。けれども、竹には霊力が宿るとされ、神事に欠かせないものでした。おじいさんの本名「讃岐造」の「造(みやつこ。宮つ子)」は、宮廷に仕える家来を意味します。意外にも(?)おじいさんは、貧しいながら朝廷を支えるお仕事をしていたようです。
古来から真竹は、あらゆる生活道具に加工できる丈夫で優れた素材でした。筆、楽器、竹刀、さらには利休の茶道具やエジソンの白熱電球の材料にも。おじいさんと同様、目立たなくとも日本文化を支えてきた存在なのですね(ちなみに孟宗竹は、加工に弱いので素材には適さないそうです)。
ところで、光る竹の根元からみつかったときのかぐや姫は、身長たった3寸(約9センチ)。それがすくすく育って、3ヶ月くらいで成人女性のサイズになったといいますから、さすが竹出身の成長力です。おじいさんは娘の姿を見ただけで、心が癒やされ体調が回復したといいます。しかも不思議なことに竹の中に黄金を見つけることが重なり、おじいさんはだんだん裕福になっていくのでした。
成長が早く、繁殖力が強く、霊力が宿る竹だからこその説得力かもしれませんね。
竹皮包みでワクワクを♪
おしゃれな皮から美味しいものが!
孟宗竹の皮とちがってうぶ毛がなく、ツルッとした柔らかい皮。味のある斑点模様も、現代の生活に和の特別感を演出できるアイテムとして人気です。
竹の皮には殺菌力があり、食品を新鮮に保存し持ち運ぶのにぴったり。通気性があるので、包んで蒸したり煮魚に敷いて崩れを防ぐなど、お料理にも大活躍します。竹取の翁はもちろん、『おむすびころりん』『桃太郎』など昔話のおじいさんたちも山へ出かける際には重宝していたことでしょう。
運動会や遠足などのお弁当を竹の皮で包んでみるのも楽しいですね。竹皮は、100均ショップや大型スーパー、ホームセンターなどでも購入できます。シンプルなおむすびも、包みを開けるときのワクワク感は格別! ほのかな竹の香りに心癒され、食べ終わったら荷物にならず帰りもラクラクです。
初夏の味覚も召し上がれ
姫タケノコ。中身もほっそり可憐です
アクが少ないので、皮つきのままホイル焼き・蒸し焼きなどにして醤油や味噌をつけて召し上がれ。煮物・汁の実・天ぷらにも美味しい、ほろ苦くてサクサクッとした食感です(リンク先でおすすめの調理法などをご紹介しています)。
年に一度の「初夏のタケノコ」の味も、ぜひ楽しんでみては。