映画『FOUJITA』も公開中! レオナール・フジタってどんな男性? もしかして、ネコ?

いつでも芸術の都、パリ!
ネコ男子。 肌触り優先!
先月おこなわれた『東京国際映画祭』では、ステージに上がってきた出演者・制作陣の中にオダギリさんがいないと思ってよく見たら、なんと白いスカート(風?)姿のため一瞬女性に見えていたのでした。「中性的でなよっとした ネコタイプの身体感覚がイメージにピッタリだったので、オダギリさんをキャスティングした」と小栗康平監督が語る通り、映画からはフジタの「中性的な魅力」「ネコっぽさ」がいい感じで伝わってきました。
レオナール・フジタの作品は、「すばらしき乳白色」と フランスで絶賛された裸婦やネコの絵で知られています。下地にベビーパウダーが使用された、すべすべの白。思わずなでたくなるような女性やネコなのです。
フジタは迷いネコを拾っては飼い、パリで年に2回開かれる有名なネコ展覧会の審査員まで務めました。ペットというよりは仲間。著書で「ネコには猛獣の面影があるところがよい」とも語っています。
フジタの絵は、目で触って愛でる絵画といわれます。女性やネコの温もりと肌触りは、 5歳のとき母親を亡くしたフジタの感受性が求めたものなのかもしれません。
映画のフジタは、「絵描きというのは・・・」と、芸術についてよく語ります。けれども、自分の感情はほとんど語りません。女の人に罵られても、黙ってじっとしています。女性からしたら、ちょっと不安になるタイプではあります。
裁縫男子。 手づくり優先!

「芸術家は宜しく芸術品を身に纏うべし」。
おでかけのときはダンディーな帽子や靴のブランドにこだわり、ふだん着は手作り。 ボーダーのボートネックシャツもお気に入りでした。
パリでは 小柄な日本人に合うサイズがみつけにくいという事情もありましたが、「既製品は商品でしかない」といってカーテンやベッドカバーまで自分好みに作っていたフジタ。アトリエで絵画制作と並行しながら針仕事を続けていたくらいですから、自らを「芸術品」として仕立てていたのでしょう。「メジャー模様」に細工したベルトは、体型維持のためなのか、必要に応じてサッとはずして計測するためなのか・・・。こだわりを大切にし、生活のすべてを芸術として体現していくタイプ。晩年まで、自分用だけでなく、妻の衣服や身の回りの小物まで手作りしていたそうです。しかもお料理が得意。ちょっとうらやましい夫ですね。
おかっぱ男子。 個性アピール優先!
フジタは外国で自活できた日本人アーティストの先駆者でした。 今でこそ日本人アーティストは世界中で活躍していますが、当時は一市民としても認められていたかどうか・・・くらいの存在感。とりあえずは「目立つこと」「覚えてもらうこと」が急務だと痛感してパリに生きていたのではないでしょうか。夜会イベントでも、日本舞踊風の踊りを面白おかしくやってみせたといいます。目的をもって道化になれるって、すごくかっこよくないですか?
そして芸術の国 フランス・・・!
戦争にまつわる軋轢から日本の画壇に失望してフランスに帰化し、カトリックの洗礼を受けたフジタ。それからは子供の絵を多く描くようになりました。表情にあまり可愛らしさが感じられず、ちょっと不機嫌そうにも見える子供たち・・・パリに生きるリアルな子供(または大人?)の表情なのでしょうか。国や性別・年齢を超えて、人として愛したり心を痛めたりしてこそ芸術なのかもしれません。小栗監督は当日こんなこともおっしゃっていました。
「映っているものをただ見つめる。 そして祈りが生じるのを待つ、という鑑賞の仕方があってもいい」
映画を絵画を前に、祈ります。芸術を愛する人々が世界中から集まる フランスが、どうかどうか平安でありますように。
<参考>
「藤田嗣治 手仕事の家」林洋子(集英社)
「藤田嗣治『異邦人』の生涯」近藤史人(講談社)
「藤田嗣治画文集 猫の本」(講談社)