七十二候「地始凍(ちはじめてこおる)」。来年のカレンダーには、風景がありますか?
これからいろいろ凍ります
そもそもカレンダーって何のためにあるのかというと・・・
来年の11月は何をしようかな♪
さらにカレンダーは、たんに「時間の区切り」を知らせるだけではないようです。そこには月ごとの空間があり、その空間に身を置いて「1年」というサイクルが繰り返されることへの信頼が、人間にとってとても大切らしいのです。
「 1月から始まって、ぶどうの手入れをして、小麦を刈り入れて、ぶどう酒を作って、豚を食べて、クリスマスに1年が終わる。同じことが、また来年も還ってくる、こういう確信が人間の生活の中には必要なんです。最後の瞬間ばかり頭に入れていたら、頭がおかしくなります」(Bunkamuraザ・ミュージアム プロデューサー・木島俊介氏)。人間は、定期的に繰り返されるということに 体も大きな影響を受けているのだそうです。風俗だけでなく、定期的に繰り返すことが、自然界で生きる人間に心の安寧や救いをもたらしてきたというのです。
カレンダーを眺めながら「来年の夏も海で泳ごう」「来年のお花見もあの桜を見にでかけよう」などとワクワク考えるのは、年末に弱りがちな身体能力を高めるのに役立っていたのですね!
カレンダーに欠かせない「風景画」のはじまりはオランダから
一年12ヶ月の『月暦図』は、天体の運行に合わせて月ごとに、移り変わる季節と人々の営みを表した絵です。はるか古代から描き続けられ、その中には年中行事とともに、人が存在し生きている 空間と時間の流れがありました。
めぐりくる季節は、 何世紀もの間、 月ごとの農作業やレクリエーションによって描かれてきましたが、中世後期には「時祷書」に多彩な月暦画が描かれるようになります。これは、聖職者ではない平信徒のための祈祷ガイド。これがあれば、いつどんなお祈りをしたらよいのかがわかったのですね。
「ヨーロッパには四季がない」といわれたりしますが、展覧会の『12カ月図』を観ていると、それぞれの月に豊かな自然があり、月ごとの営みがあったことがよくわかります。1日の時間の流れや、月々・季節ごとに移り変わっていく自然の情景・・・そこには「天の時間と地の時間」があり、雲の中に星座のシンボル(たとえば5月の絵には双子座らしき双子が!)描かれています。星座と四季との組み合わせで1年が表現されているようです。
展示室中央に設けられた『カレンダー・ペインティングの間』では、1年間の月暦画にぐるりと取り囲まれて、オランダの原風景を旅するように鑑賞できます。絵のなかの人々は、日々の暮らしを楽しんでいるように見えます。それを21世紀の日本人が共有できるとは! 感性の旅ってすばらしいですね。
ヨーロッパでは15世紀以降、描かれた窓の中に風景が取り入れられはじめ、それからだんだん聖書や神話の物語の舞台として描かれるようになったといいます。
風景そのものを楽しむ『風景画』が誕生したのは、17世紀のオランダでした。スペインから独立して、王侯貴族やカトリックの縛りのない裕福な市民層が 芸術のパトロンとなったからです。彼らは、現実的な美や「今」を映し出す芸術を好み、『静物画』・『風俗画』、そして身近な自国の風景を描いた『風景画』が誕生したのでした。そして、これらのもととなったのは、12ヶ月のカレンダー・アートだったのです。