日本の梅雨に、手ぬぐい。粋で便利でかさばらず、すぐ乾いて衛生的なんです
雨と仲良くなれそうな、京文様
日本人が肌身離さず持ち歩いてきた、自由自在の布
大きさはいろいろですが、現在は90センチ×35センチくらいのものがほとんどのようです。
縫い目がないのは、水切れを良くするため。掛けておくとすぐ乾き、雑菌が溜まらず衛生的です。洗濯物の嵩も減り、特有の嫌なニオイもこもりません。高温多湿の日本にはまさに理想的な「タオル」なのですね。
お風呂で庶民が使用するようになったのは、室町時代頃から。とにかく昔は布が貴重だったので、はじめは神仏まわりの清掃や祭礼の装身具として使われていました。江戸時代に綿が栽培・生産されるようになり、手ぬぐいは一気に普及して日本人の生活必需品となります。
「拭う」だけでなく、仕事時の汗止め、前掛けや着物の襟元・布団の首元掛け、頭にかぶったり物にかぶせたり・・・土ぼこりの多い江戸では、手ぬぐいであらゆる汚れをガードしていたようです。
使い込んで柔らかくなったら、赤ちゃんのおむつや雑巾、細かく裂いてハタキに。ケガをしたときの止血や、時代劇で見かける「下駄の鼻緒を応急処置」にも使われました。
一枚の布をいつも持ち歩いて、人々は自由自在に活かしてきたのです。
こんなに便利な手ぬぐいですが、戦後は「日本古来の生活用品は時代遅れ」という風潮が広がり、ほとんどの家庭ではタオルしか使わなくなってしまいました。和のブームで手ぬぐいの魅力が見直され、現在はタオルを手ぬぐいに取り替える家庭も出ているそうです。
「何にでも使う!」が基本、コミュニケーションツールにも
ちょっと包んでプレゼント
まずはハンカチ、お弁当包みなどに。和服の半襟や帯まわりだけでなく、洋服の差し色としても。とくにスカーフは、首元と肩を日焼けや冷房の風からガードする効果もあります。保冷剤を包んで熱中症予防に首に巻くのもお勧めです。しっかりアイロンをかけてポリ袋に入れておけば、ケガの応急処置の備えにもなります。
ペットボトルホルダー・サブバッグ・ポーチ・ブックカバーなど、簡単な利用法を紹介した本もいろいろあって、楽しいですよ。
瓶などの割れ物や食べ物などのラッピングにも。プレゼントとしてお交わりの盛り上げ役にもなってくれます。自分の好きなアーティストや動物、趣味を話すきっかけになり、浮世絵などなら日本文化紹介のツールになります。海外の方には、日本的な絵柄、とくに額に入れて飾れるような一枚画が喜ばれるようです。海外旅行のときにスーツケースやバッグのちょっとした隙間に入れて行くと、旅が豊かになりそうですね。
四季をバッグにしのばせて、「育てて」いく楽しさ
シンプルモダンな豆絞り
歌舞伎役者・落語家・日本舞踊家の名刺がわりにもされ、昭和には店の印や名入りの手ぬぐいが配られる習慣も定着しました。現在も薄手の名入りタオルが開店記念や年末などに配られたりしますね。記念日などにオリジナルデザインの手ぬぐいを作ってみるのも楽しいかもしれません。
観光みやげとして地名の入ったものをコレクションしている人もいるそうです。
新しい手ぬぐいは、いちど水を通してから使い始めます。 たっぷりの水で洗い、洗剤やお湯は使わない方がよいそうです。端から出てくる糸をハサミで切りながら使っていると、そのうち細かいフリンジ状になって落ち着きます。ふわふわに柔らかくなった「ヴィンテージ」に育て上げることが、手ぬぐいの楽しみのひとつなのです。一枚の手ぬぐいと末永くおつきあいしたいですね。
手ぬぐいを使っていると、四季がより繊細に感じられておでかけが楽しくなるといいます。
金魚、アサガオ、ひまわり、花火・・・一足早く夏の風情を楽しみに、お店をのぞいてみてはいかがでしょう。
『かまわぬの手ぬぐい使い方手帖』河出書房新社