神嘗祭は伊勢神宮の最重要祭祀?ー俳句歳時記を楽しむ
春の神宮神田の種蒔きと田植え、そして秋の抜穂祭
神宮神田
神宮神田では4月上旬に種蒔きの神田下種祭(しんでんげしゅさい)、5月には神田御田植初(しんでんおたうえはじめ)が行われます。笛や太鼓に合わせ、早乙女たちが田植えを行います。早乙女とは、稲の苗を水田に植えつける女性のことで、本来は、田植に際して田の神を祭る特定の女性を指したとも推察されます。稲の豊作を女性の霊力や生殖力に介して祈る意味もあり、田植えが終わると近くの摂社大土御祖(せっしゃおおつちおみや)神社で、豊穣を祈る踊りを捧げます。
暑い夏を経てたわわに実る稲穂が頭を垂れると、9月の抜穂祭(ぬいぼさい)を迎えます。抜穂祭は、神田下種祭と合わせて大切な祭りで、収穫された新米は神嘗祭で大御神に奉られます。
一年の豊穣に感謝する神嘗祭
伊勢神宮 内宮
そして10月15日午後5時、内宮での興玉神祭(おきのたまのかみさい)から大祭は始まります。同15日宵と16日暁には豊受大神宮(とようけだいじんぐう)(外宮)で執り行われるのが、由貴大御饌(ゆきのおおみけ)。由貴大御饌とは、尊い食事をお供えするという儀式で、神嘗祭の中でも、メインの儀式の一つとなります。静寂の中、大宮司以下四十名の神職が純白の装束で、神田で収穫された新穀から調製した御飯、御餅、御神酒を中心に、アワビや鯛、伊勢海老、野菜、果物など三十種の神饌を神前に供えます。続いて祝詞を奏上し、皇室をはじめ世界の人々の平安が祈られます。
16日正午には天皇陛下の勅使が参向し、絹織物を供える奉幣の儀が執り行われたのち、午後6時には御神楽が捧げられます。そして皇大(こうたい)神宮(内宮)では1日遅れて、それぞれの儀が執り行われます。この両正宮に続き、25日まで十四の別宮をはじめ、驚くべきことに百九社の摂社末社所管社全てにおいて、神嘗祭が行われるのです。一般的には10月17日を恒例とする神嘗祭は、実際には10月15日から25日まで行われています。まさに伊勢神宮における最大のお祭りといえます。
馬で来る神嘗祭の勅使かな
・神嘗の供進使仕ふ祭なり 斎藤俳小星
・神嘗や豊秋津洲の民となり 出口叱牛
・馬で来る神嘗祭の勅使かな 野田別天楼
俳句の引用と参考文献:
『角川俳句大歳時記「秋」』(角川書店)
『ザ・俳句十万人歳時記 秋』(第三書館)
Kankan(著・写真)『伊勢神宮 日本人のこころのふるさと』 (JTBパブリッシング)
瀧音 能之 (著)『図説 日本人の源流をたどる!伊勢神宮と出雲大社』(青春出版社)
伊勢神宮 御酒殿