180年にわたる写真の進化の歴史をたどる
そこで今回は、写真の進化の歴史を見ていくことにしましょう。
ダゲレオタイプの感光材料からフィルムへ
発明当初のダゲレオタイプの露光時間、つまりシャッタースピードは明るい日中でも15~30分かかったそうです。撮られる人は写真機の前で長時間じっとしていなければいけないため、後ろから首を固定するつっかえ棒や、体を支える台などが使われていたとか。しかも、この時代の感光材料やカメラはサイズが大きく、取り扱いや持ち歩きに不便なのも難点でした。
こうした点を改良し、現在の写真フィルムにつながる「高感度で薄く、巻き取って扱える」モノクロのロールフィルムが、1888年にアメリカのイーストマン・コダック社から発売されます。その後、1935年にはカラーフィルムが、さらに1948年には撮影した直後にプリントが見られるインスタントフィルムが登場し、写真技術の発達はさらに加速していきました。
フィルムの進化とともにカメラ本体も小型化・高性能化
エルンスト・ライツ社の「ライカA型」
これ以降、カメラは世界中のさまざまなメーカーで製造されるようになり、レンズやフィルムの技術開発によって、さらにコンパクトな高性能カメラが登場。1977年には日本のコニカから、世界初のオートフォーカスカメラ「C35AF」が発売され、「ジャスピンコニカ」の愛称で親しまれました。
また、1986年にはフジカラーが、カメラのいらないレンズ付きフィルム(使い切りカメラ)「写るんです」を発売。写真は一般市民にとってますます身近な存在となっていきました。
ちなみに、この「写るんです」の一部モデルは現在も製造・販売されており、レトロ感覚のアナログな撮影アイテムとして若い女性に人気を集めているそうです。
フィルムが不要なデジタルカメラが登場
カシオのデジタルカメラ「QV-10」
以後、画像技術の電子化の流れは加速し、写真はアナログからデジタルへと移行していきます。当初、デジタルカメラはプロ向けの製品が中心で高額でしたが、1990年代にはさまざまな普及モデルが登場しました。
そのひとつとして日本で注目を集めたのが、1995年に発売されたカシオのデジタルカメラ「QV-10」です。320×240ドットという低解像度で、ズームもフラッシュも付いておらず、電池もすぐなくなるといった欠点はありましたが、フィルムのいらない画期的なカメラとして大ヒット。デジタルカメラ市場の発展に貢献した国産モデルとして、2012年には国立科学博物館の重要科学技術史資料(未来技術遺産)に認定されました。
携帯電話の普及とともに写真はデジタルの時代へ
── 以上、カメラの発明とともに進化を遂げてきた写真の歴史を振り返ってみました。ダゲレオタイプの写真機が登場した当時、写真がここまで進化するとは誰も想像しなかったでしょう。発明から180年の年月を経て、いま当たり前のように使われているデジタルカメラですが、人類史に残る驚くべき技術革新といっても過言ではありません。
そして、これから10年後・20年後、写真技術がどこまで進化し、私たちの生活や社会に新たなイノベーションをもたらしてくれるのでしょうか……ちょっとワクワクしますよね!
※参考資料/キャノンHP
※本記事は、3月19日が「カメラ発明記念日」であることにちなんで記事の配信を行いましたが、この日を発明日だとする根拠が不十分なことが分かったことから、記事内容を一部修正しております(2021年4月1日)