心身を癒すエディブルフラワーの元祖「食用菊」の効用とは?
昔から食されてきたエディブルフラワーの元祖「食用菊」
庭園で高貴に咲き誇る大輪の菊も、道端でひっそりと咲く可憐な野菊も、見ているだけで清らかな気分にさせてくれますよね。
また、延命長寿の花として知られる菊は、古くから食用・薬用にも広く用いられ、最近はその効用が科学的にも明らかになってきました。
秋の夜長、食して心身ともに癒される「食用菊」にまつわるお話をお届けしましょう。
「もってのほか」という愛称も。食用菊のプレミアム品種「延命楽」
筒状をした紫色の花びらが特徴の大輪種「延命楽」
食用菊といえば、刺身のツマなどに添えられる黄色い小菊がメジャーですが、それ以外にも多種多様な品種が全国各地で栽培されています。
なかでも、味・香り・食感ともに優れたプレミアムブランド品種として知られるのが、山形・新潟県で栽培される大輪種「延命楽(えんめいらく)」です。
紫色の花を大輪に咲かせる延命楽は、毎年10~11月頃に出荷のピークを迎えます。
菊の芳香をほのかに感じる、繊細な甘さとほろ苦さは、まさに秋ならではの典雅な味わい。花びらが筒状に丸まっているため、茹でても形が崩れず、シャクシャクした心地よい歯応えが楽しめるのも魅力です。
山形県では「もってのほか」「もって菊」という愛称で呼ばれていますが、これには「菊の御紋(天皇家の御紋)を食べるのはもってのほか」「思いのほか美味しい」といったことに由来しているとか……。
また、新潟県では「カキノモト」「オモイノホカ」と呼ばれています。
中国・ヨーロッパでは「菊のお茶・ハーブティー」が定番
消炎・解熱作用があるといわれる菊茶は、風邪を引いた時に飲む薬茶として、また、眼精疲労などにも効果的な健康茶として、大人から子どもまで広く飲まれているそうです。
ヨーロッパでも同じキク科のカモミールが、消化不良や胃もたれを和らげ、精神の安定や安眠を助けるハーブティーとして愛飲されています。
炎症を和らげる効果が高いことから、ケガや捻挫をした時に、患部をカモミールティーに浸しておくという「おばあちゃんの知恵」的な民間療法もあるとか。
煎じて飲むだけでなく、いろいろな活用法があるんですね。
科学的にも解明されてきた菊花の効用
刺身のツマの小菊も残さずにいただきしょう!
【解毒作用】
菊に含まれる「テチラクマロイルスペルミン」という化合物が、生体内の解毒物質「グルタチオン」の産生を高め、細胞内の抗酸化作用、毒物・薬物の排出作用を促すことが発見されています。
【発ガン・悪玉コレステロールの抑制】
食用菊に含まれる「クロロゲン酸」と「イソクロロゲン酸」に、発ガン予防や悪玉コレステロールを抑える働きがあると発表されています。
【アンチエイジング】
食用菊には抗酸化作用の高い栄養成分(βカロテン・ビタミンC・葉酸などのビタミンE群・ミネラル類)が多く含まれているため、アンチエイジングの観点からも注目されています。
この季節、彩り美しい風雅な秋の味覚として、家庭料理にも取り入れたい食用菊。
菊花は大量に食べるものではありませんが、たとえ彩りであっても、体によい成分が含まれているのは嬉しいですよね。
もちろん、刺身のツマに小菊が添えられていたら、残さずにありがたくいただきましょう。花びらを刺身やしょう油、お吸い物などに散らして一緒に味わえば、ほのかな菊の香りと華やかさが加わって、見た目も美味しさもワンランクアップしますよ。