春野菜で野生に目覚めよう!抵抗力を活性化させる春の苦味を食すとは?
なんで春野菜には苦味があるの?
先人たちは若い芽をもとめて野山へでかけ、若草や木の芽を摘んで食べました。自然の精気を身体に取り入れていったのです。やがて夏へとすすみ草の根は大地の中で養分を蓄え、木の芽は実を結んで熟していきます。秋には大地の実りを食べて力をつけ、冬へと向かいます。循環する自然の中で恵みを得る風習は、生きる知恵の伝承でもあったわけです。植物が作りだした苦味は、人間の身体にとっても大切な抵抗力へとつながっていくのです。
「苦味受容体」これが守り神!?
実はこの苦味が私たちの身体を「細菌から守る」という大切な役割を果たしていることがわかってきているのです。春の苦味は身体にいい、という言い伝えが、科学でも解明されてきたということです。苦味を感じるタンパク質「苦味受容体」の働きは、侵入してきた細菌に対してそれぞれ役割をもつ細胞に指示を出します。まず線毛を働かせて外へ押し出し、殺菌のために一酸化窒素を噴き出させ、さらに抗菌タンパク質を放出させて病原菌を殺すという3種の防御反応を連鎖して実行させるというわけです。
「苦味受容体」は舌だけでなく鼻、気道、心臓、肺、腸といった器官にも存在し、体内に入ってきた物質に対して素早い反応をする見張り役なのです。この素早さは害を及ぼす可能性のあるものは早く知らさなくてはいけない、という生命の本能が発達させたということです。命を守る行動はまさに時間が勝負です。
春野菜は思いきって「生」で食べてみよう!
春野菜は苦味やアクが強いから充分あく抜きをして、とよくいわれますが採れたて新鮮なものでしたらぜひ、ほんの少しは生で食べてみるのはいかがでしょうか。植物が持つ抵抗力を私たちにも分けてもらう、そんなつもりで生命力アップを図ってみようと思います。もちろん胃の弱い方は無理をしてはいけません。大量に食べるのもかえって逆効果です。毒は薬、薬は毒です。
天と地がこれほど生き生きとする季節はありません。土の輝きは瑞々しい新緑へとつながり、目にも活力を与えてくれます。見まわせばエネルギーの詰まった芽があちこちに出てきています。寒さで縮こまっていた身体を伸ばして新鮮な息吹をしっかりと取りこんでいきましょう。
参考:
『別冊 日経サイエンス 食の未来』日経サイエンス社