今夜は十五夜!「中秋の名月」は見やすいってホント?
満月に輝くすすき
平安時代の貴族は月下に宴を張り、水面に映る月影をめでて詩歌を読む、というなんとも優雅な楽しみかたをしていたようです。
月の盈ち虧けで月日を知り、米作りなど農作業を行っていた人々にとっては、秋の空に明るく浮かぶ満月を眺める気持ちは、豊作の祈願、収穫の感謝とともに格別の喜びがあったことでしょう。
このように陰暦の8月15日は特に「仲秋の名月」として大切にされてきました。でも、ふしぎに思ったことはありませんか? 30日に一度はやって来る満月ですが、なぜ秋のこの時の満月が特別なのでしょうか?
理由はいくつかあるようですよ。
調べてみると、秋の月は見やすい高さにあるんです
天球儀
今年の春分、夏至、秋分、冬至前後の月の南中高度を国立天文台のHPにある<暦計算室>調べてみました。
[春分]
新月:3月 9日 49.8度
上弦:3月16日 72.2度
満月:3月24日 51.0度
下弦:3月 2日 36.7度
[夏至]
新月:6月 5日 71.6度
上弦:6月12日 57.4度
満月:6月20日 35.0度
下弦:5月28日 40.1度
[秋分]
新月:9月 1日 62.7度
上弦:9月 9日 36.2度
満月:9月16日 49.6度
下弦:9月24日 72.5度
[冬至]
新月:12月29日 34.7度
上弦:12月 6日 43.3度
満月:12月15日 72.9度
下弦:12月22日 52.6度
参考:国立天文台天文情報センター暦計算室
このようにしてみると季節によって月の高さはずいぶんと違うものですね。
春分の頃は上弦の月が高く、夏至の頃は新月、秋分の頃は下弦の月、そして冬至の頃の空は満月が高く輝いているわけです。
「中秋の名月」は高くもなく低くもないちょうど良い高さで楽しめる位置にある、ということではないでしょうか。月を生活の中に感じて暮らしていた昔の人にとっては、自然に身についた感覚だったのかも知れませんね。
「アレアレ? 春の満月も高さを見ると秋と同じくらい見やすい高さにあるからお月見にいいんじゃないかしら・・・」
と思われますか? 確かに高さとしたらちょうどよさそうですが、春分の頃といえば春とはいえまだまだ平均気温が今の東京でも10度前後。その昔のこと、と想像するとお月見をするにはちょっと寒すぎたのではないでしょうか?
国立天文台天文情報センター暦計算室のURLから、日本各地の月の出、月の入り、南中などのデータが見られますので、参考にして下さい。
澄みわたる空は天高く・・・
栗と里芋
秋の空が高く見えるのは夏に比べて空気の透明度が高くなるからなのです。夏の間は南の太平洋から張り出してくる高温で湿潤な高気圧に覆われていましたが、秋になると大陸からの高気圧が移動してきます。これは夏の湿気の多い空気とは違い乾燥した空気を運んできますので、視界が良くなり空が澄んで高く見えるのです。
また、台風や秋の長雨の後は地面が湿っていて、ちりやごみが立ちにくくなっているのも大気の透明度を上げて空を青く高く見せる要因となっているのです。
ユーラシア大陸から少し離れて太平洋に横たわる日本列島。天候の影響を大きく受ける中で、「これぞ!」という美しい「中秋の名月」を愛でるのは、大気の澄んだ過ごしやすい秋が絶好の時だったのですね。
そして一年の収穫に感謝をささげて
月見団子と兎
現代に生きる私たちにとっても、夏の暑さを乗り越えてようやくやってきた秋にホッとひと息ついているころです。稲穂にみたてたススキには厄払いの意味もあるとか。お月さまに見立てた団子や里芋を飾って、実りの秋に感謝をする日にしてみるのはいかがでしょう。
参考:
学研の図鑑 『宇宙』 学研
林完次監修 『月とこよみの本』 宝島社