昭和ノスタルジー、『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』。そして、その先の先へ
そこで今回は、戦後の昭和を代表する3つの漫画から時代を振り返ってみたいと思います。
あの頃は良かった!?誰もが未来を信じていた時代
昭和を象徴する言葉に「一億総中流」があります。高度経済成長によって、物質的な豊かさを享受できる消費文化が国民に広く行き渡ったことが、このような時代の空気を醸成したのですね。格差社会といわれる現在からみると、戦後の昭和は「古き良き時代」なのかもしれません。
この古き良き昭和の時代を舞台にした、現在も国民的人気を誇る漫画があります。『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』を紐解きながら、昭和を再発見する旅に出てみましょう。
戦後間もなく連載スタート!一億総中流の家族像『サザエさん』
『サザエさん』は、日本が驚異の経済復興を遂げようとしていた時代に誕生しました。終戦からわずか11年後の1956年、政府の経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言されます。テレビ放映が始まったのは、高度経済成長期真っ只中。会社員の夫と専業主婦の二世帯家族である磯野家は、「一億総中流」の代表的な家族像でした。定時で仕事を終え、駅前の居酒屋で集う波平さん(54歳)とマスオさん(28歳)。サザエさんは24歳の主婦で、母親であるフネさん(50ン歳)のサポートのもと一児(タラちゃん・3歳)の子育て中。夕食は家族揃って食卓(ちゃぶ台)を囲み、会話を交わします。深夜残業、晩婚化(サザエさんは21歳で出産!!波平さんは51歳でおじいちゃんに!)やワンオペ育児といった社会問題は見当たりません。
今の世相とは異なる違和感を感じながらも、幼少期の頃の記憶が呼び起こされ、懐かしく感じる人も多いのではないでしょうか。
1970年代に子どもだった人々の原風景、『ドラえもん』と『ちびまる子ちゃん』
アニメのなかでは昭和の一時代が舞台となっている『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』ですが、それぞれ映画化されたり、舞台作品となって、今の時代を反映する表現に進化しています。もともと4コマ漫画だった『サザエさん』は、連載の後期から終了する1974年には社会風刺をネタにした作風が多くなったそうです。長谷川町子さんが、もし今の時代を漫画にしたらどんな作品が生まれたのでしょうか。待機児童問題に立ち上がるサザエさん、早期退職し盆栽を極める波平さん、一念発起し起業に奔走するマスオさん、アプリを作って一攫千金を目論むカツオくん、塾通いに疲れるワカメちゃん、インスタにレシピを投稿して「いいね!」を量産するフネさん……。
時代に翻弄されながらも明るく力強く生きるサザエさん一家の日常を妄想しつつ、昭和から平成、そして令和へと3つの元号を経験できることに感謝し、来るべき新しい時代を心穏やかに迎えたいと思います。
参考サイト
長谷川町子美術館