風薫る「皐月」の到来!新緑が輝く光の季節
皐月の「サ」は、「田植え」の意
早苗月(さなえづき)ともいわれるこの月は、田植えが盛んで、まさに「早苗」を植える月。さつきの「さ」は神に捧げる稲の意もあり、「田植えの月」という解釈もあるのだそうです。
稲の苗である「早苗」、田植えをする女性を指す「早乙女(さおとめ)」、しとしとと続いて降る長雨を表す「五月雨(さみだれ)」など、さつきにまつわる言葉も様々。そして、もともとは梅雨どきに見られる晴れ間を意味する「五月晴れ(さつきばれ)」は、最近では、ちょうど今時分、五月のカラリと晴れ渡った日を指す言葉にもなっています。
明日5月2日は八十八夜。新茶の茶摘みも始まります
八十八夜の三日後が二十四節気の「立夏」。今年は5月5日で、ちょうど端午の節句と重なります。そろそろ全国各地で新茶の茶摘みが始まるころ。茶畑では日々新芽がすくすくと伸びています。青く広がる空の下に鯉のぼりがはためき、新緑の山々には藤が咲き、きらきらと降り注ぐ陽光に青もみじが透けて見え、季節は今まさに初夏。吹き抜ける薫風に誘われて、足取り軽やかに戸外へ出掛けたくなる折です。
万葉集や伊勢物語の中でも詠われた「杜若」が咲くころ
かきつはた衣に摺りつけますらをの着そひ狩する月は来にけり
このことがよくわかるのが、大伴家持が天平16年4月5日(現在の5月21日)に詠んだこの歌。5月5日の宮中行事であった薬狩の晴れ着は、この杜若を着物に摺りつけたもので、盛装して天皇の供をするのを心待ちにしていた心情が詠われています。
また、「杜若」にちなむ歌としては、「かきつはた」の5文字を歌の各句の第一音に入れた、あまりにも有名な歌もあります。
(か)ら衣(き)つつなれにし(つ)ましあれば(は)るばるきぬる(た)びをしぞ思ふ
都の男(在原業平)が、ある事情から遠く東国まで来た気持ちを、水辺に咲いていた杜若にかけて詠み込んだこの歌。お供の人々も涙して、食していた乾飯がふやけてしまったというオチもなんとはなしに微笑ましい、伊勢物語の東下りの一話です。
※参考/現代こよみ読み解き事典、万葉植物事典