二十四節気「穀雨(こくう)」。百穀を潤す春の雨が、けむるように降るころ
田畑の準備が整い、それに合わせて恵みの雨が降るころ
そろそろ田畑の準備も整い、小麦の収穫や田植えの時期も迫ってくるころです。
湿度を帯び、けぶるように降る春の雨。さまざまな雨の名前がこの季節の風情を物語ります。
「甘雨(かんう)」は草木を潤す雨のこと。
「春霖(しゅんりん)」は春の長雨。菜の花が咲き競う頃降る長雨だから「菜種梅雨(なたねづゆ)」といわれたりもします。
「催花雨(さいかう)」は、桜をはじめ色々な春の花を咲かせる雨。
桜が盛大に散った後も、花水木、レンギョウ、サツキにツツジと、次々と競うように咲く花の開花をうながします。
催花雨(さいかう)にうながされ咲くジャパン・ローズ「山吹」の花
秋の萩に対して、春の里山の代表的な花として、万葉の昔から愛されてきました。
開花時期は、4月の初頭から末頃。現代ではなんとなく地味な存在ではありますが、万葉の時代には恋の花として、宴席では頭に挿して飾られるなど、人々を魅了する花であったようです。
バラ科の山吹は、イギリスでは「イエロー・ローズ」。「ジャパン・ローズ」とも呼ばれているとか。
金色にみまがうほどに鮮やかな山吹の黄色は、見る者の心をはっととらえてきたのでしょう。
甘雨(かんう)に山椒も「木の芽」を伸ばし、花を咲かせます
山椒は日本原産の香辛料。卑弥呼の時代にさかのぼるほど昔から日本人に親しまれ、葉、蕾、実と多目的に利用できる優れもの。葉や実にまして、なんとも言えない香りが口の中だけでなく、部屋中に広がるという花山椒。一度入手して食してみたいものです。
ひと雨ごとに緑の濃さが増し、しばし忘れていた、夏の暑さを思い起こす時季となりました。
※参考&引用
植物と行事(湯浅浩史著・朝日選書)