12月8日の伝統行事「事八日(ことようか)」。日頃使っている針に感謝し、裁縫上達を願う「針供養」の日
今年一年、おつかれさま
一年の農事の終わり12月8日の「事納め」と、農事の始まり2月8日の「事始め」
これは、月の満ち欠けを指標にした旧暦の名残をとどめる大切な習わし。半月となる八日の月は満月から晦日への中間を知らせ、古来、物事のけじめに用いられたそうです。
そんなところから、12月8日と2月8日を合わせて「事八日(ことようか)」と呼び、事を始めたり納めたりるする大事な日とされています。
1年の農作業を終える日として、「事納め」の12月8日。農作業を始める日として、「事始め」の2月8日。前者は主に関西地方で、後者は主に関東地方で、様々な行事が行われてきたのです。
ちなみに12月13日も「事始め」と呼びますが、こちらはお正月を基準とした「正月事始め」。この日から迎春準備を始めます。
12月8日と2月8日に行われる「針供養」。こんにゃくや豆腐に針をさし労をねぎらいます
色白美人になりますように
その発祥は和歌山の淡嶋神社。いつもは固いものにさす古い針や折れた針を、この日だけは柔らかいコンニャクや豆腐にさし、ありがとうと感謝をささげ、神社に納めたり、川に流すなどして、裁縫の上達を願ってきたのです。
この「針供養」。先に記した「事納め・事始め」の捉え方の違いから、12月8日に行う地域と2月8日に行う地域があります(現在では両方行うところも多いようです)。
和歌山の淡嶋神社をはじめ全国の淡島神社、浅草寺の淡島堂、大阪天満宮、名古屋・若宮神社など各地で「針供養」は行われていますので、(12月8日or2月8日に行われるか確認のうえ)お近くの神社仏閣へ一度参拝してみてはいかがでしょう。
京都・法輪寺の「針供養」は、平安時代にまでさかのぼり、今も皇室の針を供養しているそうです。
ひと針ひと針、思いを込めて。今も昔も変わらない人の想い
針は手仕事の象徴
大切な人のために、美しく装うために、生まれたわが子のために、ひと針ひと針縫うための大切な道具・針。針仕事が暮らしそのものを支えていたころからの人の想いを、今に伝える「針供養」。針に限らず、私たちの身の回りにある小さき物さえも大事にするそのこころを、これからも受け継いでいきたいですね。
ひと針ひと針、想いをこめて
年中行事読本(創元社)