「赤とんぼ」という“とんぼ”は、実は存在しないってホントなのでしょうか?
体が赤くなるアカネ属のとんぼ
秋の気配が街を包む頃になると、私たちの視界の中に赤とんぼの姿が見え始めます。「♪夕焼、小焼のあかとんぼ、負われて見たのは、いつの日か」の歌詩で有名な童謡『赤とんぼ』もあるくらいですから、日本人にとって赤とんぼといえば「秋」の代名詞的存在といえますね。
そんな赤とんぼですが、実は「赤とんぼ」という名称のとんぼは存在していないのです。では、いったい私たちがふだん“”赤とんぼ”と呼んでいる”とんぼ”は何者なのでしょうか?
実はたくさんいる赤とんぼの仲間
とんぼという昆虫は、世界中あらゆる国に生息しているといわれています。なんと、その種類は6000種類のぼるというから驚きですよね。なかでもアカネ属とされるとんぼは、世界に50種類ほど、日本では21種類が確認されているといわれています。
実は、このアカネ属、以前は「アカトンボ属」と呼ばれていたのだとか。ただ、なかには体が赤くならない種類も含まれていたため、アカネ属に変わったようです。
赤くならないとんぼの秘密
メスのアキアカネの体は黄色なんです
オスだけが赤くなる理由のひとつとしては、「縄張り争い」が関係しているのではないかという説があります。自分の縄張りを守るためには、長時間、太陽の光が降り注ぐ場所に滞在していなくてはなりせん。そうした理由からとんぼも紫外線から体を守ろうとして、次第に体が赤く変色していった……というわけです。
紫外線を避けようとするのは人間と一緒なんですね。
とんぼが秋を象徴する存在である理由
とんぼは秋の象徴
実は、先ほど紹介したアカネ属のとんぼの中には、夏が得意なとんぼと夏が苦手なとんぼがいるのですが、 「アキアカネ」というとんぼは夏が苦手。暑さが嫌いなアキアカネは夏に気温の低い高地へ向かい、気温が下がる秋になると再び平地へ戻ってきます。
こうしたアキアカネの生態から、秋になるととんぼをよく見かけるようになる、というわけなのです。
「ナツアカネ」は夏の季語。「アキアカネ」は秋の季語
同じアカネ属でもアキアカネとナツアカネを比較すると、実は異なる特徴(生態系)である点も興味深いのですが、
●「夏茜」とも書く「ナツアカネ」は、夏の季語
●「秋茜」とも書く「アキアカネ」は、秋の季語
「赤とんぼ」と「秋茜」は五文字で文字数が同じですが、秋の俳句を読む際に「赤とんぼ」ではなく「秋茜」の季語を用いると、なんだか上級者っぽく感じませんか?
――ひとくちにとんぼといっても様々な種類があり、特徴・生態系もそれぞれ。秋にとんぼを見かけたら、その体の色を観察してみるのもおもしろいでしょう。