タンポポってみんな同じ種類じゃないの?! お散歩が楽しくなるタンポポの見分け方♪

生まれてはじめて摘んだのも「旅立ち」という行為を知ったのも・・・
白いタンポポ、見かけたことがありますか?

シロバナタンポポ
古来から日本にある在来種とヨーロッパから入った外来種(セイヨウタンポポ)があり、見分けるには花の下側を見ます。花の下を包む細長い部分「総苞片(そうほうへん)」が反り返っていたら、それはセイヨウタンポポ系です。
在来タンポポはやや背丈が低くて地味めな印象ですが、セイヨウタンポポは花も大きくて見た目が派手。また、在来種が春の短い期間に咲くのに対して、外来種は夏が過ぎてもがんがん咲いています。
ふたつのもっとも大きな違いは、その繁殖力の強さなのです。
セイヨウタンポポは、じつは受粉しなくても自分のクローンで増えることができ、都会のど真ん中で1本咲きしていても ちゃんと綿毛をつくって飛ばせてしまう強者! 背が高いので、在来タンポポより軽い種をより遠くまで飛ばせます。しかも種の数も多く花の期間が長いため、今や日本に自生するタンポポの8割はセイヨウタンポポと固有タンポポの交雑種といわれているくらいです。
そんな事情から、セイヨウタンポポは 環境省の『要注意外来生物』さらには日本生態学会の『日本の侵略的外来種ワースト100』に指名手配、じゃなくて指定されています。が、セイヨウタンポポと在来タンポポは実際はちゃんと住み分けされているので侵略はないという説もあります。
エゾ(蝦夷)タンポポ、カントウタンポポ、トウカイタンポポ、カンサイタンポポ、ツクシ(筑紫)タンポポ・・・などと、タンポポは地域によって種類がきれいに分かれているようです。関西以西には白いタンポポも普通にあり、シロバナタンポポと呼ばれています。綿毛で飛びながらお互いに旅先で混じり、その地に根を下ろすのでしょうか。
今はセイヨウタンポポと在来種の交雑種も増えているそうです。
たん、ぽぽん。打楽器の音みたいな日本名

つみとってささげたら ひとに笑われそうな(松任谷由実『ダンデライオン』より)
「タンポポ」は鼓草(つづみぐさ)とも呼ばれます。まるい花を横から見ると鼓に似ているからとも、茎の両端を細く裂き水に浸けると鼓の形になるためともいわれています。タン、ポ、ポン、と鳴る鼓の音を真似て子どもたちが「タンポポ」と名付けたという説があるそうです。また、綿毛の様子が 「たんぽ」(綿を丸めて布で包んだもの)に似ていることから「たんぽ穂」と名づけられた、という説もあります。
漢字では中国名「蒲公英」 と書きますが、この由来ははっきりしないようです。
英語名は「ダンデライオン」(dandelion。松任谷由実さんの曲で知ったという方もいらっしゃることでしょう)。「ライオンの歯」という意味のフランス語で、葉のギザギザが似ているからこう呼ばれるようになったのだそうです。太陽のシンボルであるライオンと太陽のように輝く花を結びつけたもの、という説もあります。
ところで、タンポポって「子どもの花」というイメージがありませんか? 幼い頃あまりに身近だったので、大人になると「卒業」した気分になってしまうのかもしれませんね。
南風がためいきでタンポポを飛ばす伝説

いってらっしゃい、気をつけてね
ある日、ぼんやり野原を眺めていると、美しい金色の髪の少女の姿が見えました。ひと目で恋におちたのですが、なにしろ怠け者なので行動を起こすこともなく、ただ来る日も来る日も姿をながめて楽しんでいました。
ある朝のこと。少女がいた場所に、白髪の老婦人が立っているではありませんか。
「夜に北風が来たのだ。冷たい手であの娘の髪に触れ、真っ白にしてしまったのだ!」
シャワンダゼーがそう言ってため息をついた瞬間、白い髪が吹き飛んで、老婦人は消えてしまったのです。
それから春ごとに、よく似た金髪の乙女たちが現れましたが、シャワンダゼーは最初の少女が忘れられず、今日もためいきをついているのです。
(北米インディアンの言い伝えより)
この伝説から「別離」という花言葉が生まれたといいます。タンポポの花言葉は他に「愛の神託」「神のお告げ」「真心の愛」など。ヨーロッパでは花びら占いだけでなく「タンポポの綿毛を一息で吹き飛ばせたら恋が成就する」と信じられてきたのです。
どなたでも一度は、子どもの頃フ〜ッと息を吹きかけてタンポポの綿毛を飛ばした経験をおもちなのでは。ふわふわ飛んで行く綿毛を見ていると、なぜか優しい気持ちに・・・「ためいきで綿毛を飛ばして恋占い」なんて、大人ならではのロマンですね。
星野富弘さんの『たんぽぽ』

生命力あふれる水彩の植物画と直筆の詩。おどろくことに、これらは全て口に筆をくわえて描かれたものでした。
体育教師だった星野さんは、クラブ活動の指導中に頸椎を損傷し、手足の自由を失います。その後クリスチャンとなり、唯一動かせる口を用いて絵を描きはじめたというのです。
作品を展示した美術館には多くのファンが訪れ、詩に曲がつけられた合唱曲などのコンサートが各地で開催されています(興味のある方はリンク先を参照してください)。
「生かされている」ことを忘れる人間と、それに気づかせてくれる植物たち。その中にはタンポポも。
「いつだったか きみたちが空をとんで行くのを見たよ
風に吹かれて ただ一つのものを持って 旅する姿が うれしくてならなかったよ
人間だってどうしても必要なものは ただ一つ
私も 余分なものを捨てれば 空がとべるような気がしたよ」
どんなに踏まれても枯れずに茎を伸ばし、空に放たれて着地した場所で育つタンポポ。
こんどお散歩の途中で見かけたら、ここまで来た旅にも思いを馳せつつ観察してみてくださいね。
<参考>
『散歩でよく見る花図鑑』亀田龍吉(家の光協会)