本日、冬土用入り。旬のウナギがもう食べられなくなる?! それはミステリアス系ニョロ魚だから
未来の日本人は「う」の味を知らないかも・・・!
ただ川で寝ている黒ニョロ魚じゃありませんでした
つかむときは人差し指と中指の間に首をはさんでみてね♪
ウナギの生まれ故郷は、日本から遠く離れた南の海。マリアナ諸島の西方沖の深海で各月の新月にだけ、一斉に産卵されるといいます。なんだかミステリアスですね。
「レプトセファルス(小さな頭という意味)」と呼ばれる、透明な柳の葉っぱみたいな仔魚は、自力で泳がず海流にのってふわふわ旅に出ます。姿と名前を変えながら成長する旅・・・しばらくして稚魚の「シラスウナギ」となる頃には、海流の流れから離脱して川を遡る泳力もついています。日本に来るのはこの段階ですね。冬から春にかけての新月の夜、シラスウナギは満ち潮に乗って川を遡り、なんと岸辺に上がると、湿った地上を這って移動!! 海とつながっていない池や沼などにも入りこんでしまうのです。
育つにつれて体が黒みを帯びた「クロコ」になり、さらに成長して一人前になると黄色みを帯びた「黄ウナギ」になります(養殖ウナギは黒っぽいままだそうです)。食べ物は、小魚・エビ・カニ・貝・アカムシ(ユスリカの幼虫)・ ミミズ・ カエル等々。住んでいる場所にいるさまざまな生きものを(死んでいても)貪欲に食べて、大きくなります。そして産卵のために南の海に帰る日まで、長ければ10年以上も日本の川や池で暮らすのでした。
そう、ウナギにとって日本は貴重な定住期間を過ごす場所なのです。落ち着ける第二の故郷、スナフキンにとってのムーミン谷・・・ 日本人のウナギ好きと親しみは、川での長いおつきあいで育まれてきたのですね。
個人情報は耳の中で保護してます(見られちゃうけど)
寿命は、オスで数年・メスで十数年。浜名湖では 22歳のメスが採集されたこともあるそうです。どこで年齢がわかるのかというと、耳の中にある石。ウナギの耳石(じせき)には、1日育つごとに形成される『日周輪』という同心円状のパターンがあり、日齢や生育環境の歴史など個人史がばっちり読み取れるのですね。
それによると、ウナギには川を遡らないで海で育つ「海ウナギ」も多いことがわかっているそうです。とはいえ、海ウナギの雌雄の比率はほぼ同じなのに、川や淡水に入ったウナギはなぜかメスが圧倒的に多かったり 養殖ウナギはほとんどがオスだったりと、謎は尽きないようです。
オスは、5年前後で「大人の旅立ち」モードに。目が大きくなり 脂ののった「銀ウナギ」に変身して、産卵回遊に旅立っていきます。ところが、オスだけ行かせておいて、メスはさらに何年か居残ってから海に戻るのです。長くとどまっていたら外敵に狙われて食べられてしまうリスクは増えますが、ここでできるだけ体を大きくして立派な卵をたくさん作るためかもしれません。逆にオスは、体が小さくても個体数を確保することを優先して早めに移動するのではといわれています。日本で大きなウナギを見たら それはたぶんメス、です。
ウナギの恋愛・結婚・出産(産卵)には謎が多いため、人間には卵から大量のウナギを育てる技術がまだありません。ということは・・・現在の「養殖」は、沿岸にたどり着いた「シラスウナギ」を育てている、ということ。食卓にのぼるウナギは、いわばすべて「天然もの」だったのです! 私たちが食しているウナギのほとんどが養殖ウナギということを考えれば、「シラスウナギがどのくらい獲れるか」に丑の日がかかっているのも納得です。
研究や乱獲防止と同時に、親となるウナギが元気に育って産卵できるように広い範囲の海や川岸の環境をととのえることが急務なのですね。
今日から春の準備開始! 口紅を買うのもオススメです♪
一説によると、年4回の土用にはそれぞれに違うオススメの食べ物があり、冬土用には「未」の日に「ひ」がつくものか赤い(緋色の)ものを食べるとよいのだそうです(挽肉でしょうか) 。今後はもしかしたら こちらも定番化するかも? 何にせよ、未来の日本人がウナギを美味しく食べられる冬土用だといいですね。そしてウナギの長い旅と海に思いを馳せる日になれば・・・。
江戸時代には、この時期のベニバナでつくった紅を口元に塗ると、病気や災いがブロックされると考えられていたそうです。冬土用にはひと足早く春色の口紅など新調してみるのはいかがでしょうか。
今年の色は?
『旅するウナギ』黒木真理・塚本勝巳(東海大学出版会)
『不思議の海』別冊日経サイエンス(日経サイエンス編集部/編)