ナスがもっとも美味しい季節です。なんと賄賂に関係が!? そして「あの諺」の真意とは?

締まっていこう!オー
高貴な紫と優しいフォルムが人気のヒミツ
夏に実がなる『夏の実(なつのみ)』が、『なすび』そして『なす』に転訛したといいます。室町時代の女官たちには『おなす』と呼ばれていました。
美しすぎる紫紺色は、野菜にしておくのはもったいないほど(外国産は白っぽいものや緑がかったものも多いようです)。日本人にとって紫は、『官位十二階』の昔から最高に貴いとされてきたカラー・・・しかも、ツヤツヤと輝き手触り滑らか。見るからに好ましかったことでしょう。その優美さと くせのない風味は日本人を虜にし、熱帯の野菜なのに寒い地方でもさかんに作られる人気野菜となったのです。
お嫁さんに食べさせたくない本当の理由とは?
ところで、この季節によく話題にされる諺『秋ナスは嫁に食わすな』。真意が気になりませんか?
「秋ナスは美味しいので、嫁なんかに食べさせないように!」そんなお姑さんの「いびり」説。これが有力とされるのは、『嫁に食わすな』という諺が他にもたくさんあり・・・しかもそれが「夏ダコ」「秋カマス」「秋タナゴ」「秋サバ」「秋フキ」「五月ワラビ」等々(そんなにあるとは)、いちいち旬の美味しい味覚だからなのですね。
江戸期の川柳には『秋茄子 姑の留守に ばかりくい』『二人して 秋茄子を喰ふ 仲のよさ』と、普通はどうも仲良く食べないらしい空気が漂います。さらに、母親が秋ナスを毎日煮て食べさせるので、娘が「おかあさん、もう飽きた」と言うと、母は「今年ばかりはたんと食え。来年は嫁に行くのだから」と答えるという小咄も。お嫁さんは堂々と食べられなかったのでしょうか。とはいえ、江戸っ子のお嫁さんが「食べるな」と言われて素直に従ったとは考えにくいのですが。
一方で、「お嫁さんへの心遣い」説もあります。
貝原益軒の健康指南書『養生訓』には、「ナスは性寒なり、多食すれば必ず腹痛下痢す。女人よく子宮をそこなう」とあり、『開本草』という書物には「ナスは性冷にして腸胃を冷す。秋に至りて毒もっともはなはだし」などと記されていたといいます。子宝を願うお姑さんとしては、お嫁さんの体を気遣うゆえの秋ナス回避。また、秋ナスは種が少ないことから、縁起を担ぐ意味もあったかもしれません。
夏野菜のナスは、体を冷やして のぼせや高血圧を防ぐ働きがありますが、冷え性の人がよほど大量に食べないかぎり体調を崩すことはありません。むしろ、ナスに含まれる『コリン』という成分は肝機能を高め、胃液の分泌を促進させ、食べると夏の疲れを癒してくれるのです。紫の皮には『アントシアニン』が豊富。強い抗酸化作用で細胞の老化を防ぎ、肌のシミや目の疲労回復、動脈硬化やガン予防にも効果があるといわれています。美容と健康に、安心して仲良くいただるということですね!
初夢にふさわしい、価値ある縁起ものでした

ナスの花
江戸時代、ナスは賄賂に使われていました。といっても、お饅頭のかわりに下に小判を隠したのではなく、ナス自体が「山吹色のお菓子」だったのです。徳川家のお膝元・駿河(静岡県)の三保地方ではナスの促成栽培が行われ、初なりのナスはなんと一個1両(約10万円!)という高値で買い上げられたといいます。「富士山・足高山(愛鷹山)・初なすび」は、駿河の「高いもの」ベスト3だったのですね。
「日本一」の富士山。運を「つかみとる」鷹。そしてナスは「事を成す」象徴でした。現代でも手ぬぐいなど和のモチーフに、ナス柄は好んで用いられます。
『瓜の蔓になすびはならぬ(平凡な親から非凡な子は生まれない)』という諺も、ナスが貴重だからこそ。また『親の言葉となすびの花は千に一つの徒もなし(親の忠告にはひとつとして無駄がない)』は、ナスはたいていの花が実を結ぶことから生まれたという格言です。実際には実を結ばない花もけっこうあるらしく、親が子どもにかける言葉は慎重に!と言われている気もいたします。
生でも煮ても焼いても揚げても炒めても美味しい!

まずは焼きナスなど
ほとんど水分のナスは、ダイエットにも最適。逆に、スポンジ状で油がしみ込みやすいので、揚げたり炒めたりでボリュームアップさせることもできます。レンジにかけてから調理すると油を吸いすぎず、ラップをして加熱した後そのまま冷ますと、色が抜けにくくなります。
ナスの独特の紫紺色は、アントシアニン系色素の『ナスニン』と『ヒアシン』。漬け物にするとき古釘が用いられるのは、鉄やアルミニウムなどの金属イオンと結合することによって安定した濃い紫色が固定するからだそうです。きれいな色は食欲をそそりますね。
リンク先のレシピもご参考に。バテぎみの体を応援してくれる秋ナスを、さまざまなメニューで存分にお楽しみください。