7月20日、土用入り。今年の夏は「丑の日」が2回来るのを、ご存知ですか?

うな丼は幕末頃、その後にうな重が誕生しました
1年に4回ある「土用」を合わせると、ひと季節ぶんに
土用には「土の気」が盛んになるといわれ、この期間に土をいじったり家を建てたり引っ越したりすることを忌む習慣がありました。 気候が厳しく疲れがたまる時期に農作業などで無理をさせないようにとの配慮から定められた、ともいわれます。
土の神さま『土公神(どくしん・どこうしん)』が地上にいる間は土を掘り起こしたりしてはいけないのですが、土用前にすでに始まっている工事や、神さまが天にでかけて留守になる「間日(まび)」ならOK!ともいわれていて、現在も引越しや工事の日程で考慮されることがあるようです。
『土用の丑の日』は、18日間中の「丑」の日。十二支をあてるため、今年のように2回くる年があるというわけですね。2回目の丑の日は『二の丑』と呼ばれています。ウナギ好きの人は、ちょっぴり得した気分になるのでは。
ウナギは古代から「夏ヤセによい」スタミナ食!

タレだけで一膳いけそうです
暑さで体力が消耗するこの時季は、精のつく食べものが嬉しいですね。ウナギの骨は縄文時代の貝塚からも発見されていて、栄養があることは大昔から知られていたようです。
『万葉集』には、大伴家持の歌にウナギが登場しています。
石麻呂(いしまろ)に 吾れ物申す 夏痩せに よしといふものぞ 鰻(むなぎ)とり食(め)せ
「石麻呂さん(←とても痩せていた)に私は言いたいんですが、夏痩せに良いといわれているウナギを、ぜひとって食べたほうがいいですよ」という意味です。もう一首「痩せすぎの改善にウナギをとりに川に入って、流されてしまわないようにね」という意味の歌もあり、この頃すでに健康になるためウナギを食べる、という知識が定着していたことがうかがえます。
土用の頃に食べると精のつくものを、『土用ウナギ』『土用シジミ』『土用もち』『土用たまご』などといいます。また「丑の日」にちなんで「う」の字がつく食べ物がよいという言い伝えもあり、昔は牛、馬、 ウサギなども食されていたようです。
「土用の丑の日にはウナギ」となったきっかけには諸説ありますが、もっとも有名なのはエレキテルで知られる江戸の天才蘭学者・平賀源内の「キャッチコピー」によるもの、という説です。
当時、夏場にウナギは全く売れませんでした。江戸中期までは「脂っこくて下品な魚」とされ、夏の食べ物として不人気だったのです。贔屓のウナギ屋さんに営業不振を相談された源内は「昔から土用には『う』のつく食べ物がいいっていうじゃないですか」と、『本日土用丑の日』と書いた紙を店先に貼って宣伝したところ、なんと大ブレイク! 真似する店が続出し、「土用の丑の日にはウナギ」がすっかり定番になったというのです。それが現代も続いているとは、なんという仕掛人でしょう。もちろん証拠はなく、考えたのは文人・太田南畝(蜀山人)であるという説や、ウナギ屋さんが自力で思いついたという説などもあるそうです。
「う」のつくものを食べて、丑湯に入って。体をいたわる日としてみては

蒲(ガマ)の穂
じつは天然ウナギの旬は、冬。もっとも脂がのって美味しくなるのですが、今のように開いて焼くようになるまでは、脂が落ちず少々しつこい風味だったといわれます。『蒲焼き』と呼ばれることからも、蒲(ガマ)の穂のようにウナギを丸ごと串刺しにして焼いていたようです。開く調理法は、関西から関東に広がりました。「一度にたくさんの身を串に刺せて合理的」と腹開きにする関西風に対して、「切腹みたいで縁起が悪い」といって背開きにする関東風。ウナギにも商人と武士のこだわりの違いがあらわれていますね。また、関西では蒸さずにパリッと香ばしく焼き、 関東では一度素焼きしたものを蒸してまた焼くのでふっくら柔らかくなります。白焼き、こってりタレ、ひつまぶし、お茶漬け・・・全世界のウナギの7割を胃袋におさめているという、私たち日本人。天然ウナギの絶滅危機も気になります。
梅干し・瓜(キュウリやスイカも)・うどん。さっぱり食べられて夏の体にやさしい「うのつく食べ物」が美味しい季節でもあります。食べ合わせが良くないといわれる「ウナギと梅干し」も、科学的根拠はなく心配無用とのこと。「うし」のステーキやすき焼きでスタミナをつけるのもいいですね。
土用は梅雨明けと重なることも多く、衣類や日用品に風を当てる『土用の虫干し』で、梅雨に溜まった湿気をリセットするのもお勧めです。また、土用の丑の日に薬草(桃の葉・ドクダミ・緑茶など)を入れた『丑湯』に浸かると夏負けしないといいます。お好きな入浴剤で、ゆったり疲れを癒されてはいかがでしょう。
うまいものの「う」。
好みと体調にマッチした「う」で疲労回復をはかり、今年の夏も元気に乗り切りましょう!