織と染めの美に包まれて今に伝わる名品〜静嘉堂文庫初の染織展 「名物裂と古渡り更紗」
重要美術品 唐物茄子茶入「利休物相」(伊達家伝来)の次第
金襴・緞子・間道・錦…名物裂とは?
原羊遊斎作 不昧好「八重菊蒔絵大棗」不昧在判 江戸時代、「奈良金襴(萌黄地蜀江文金襴) 仕覆」 明時代
渡来品の織物を裁ち切ったものを“裂地(きれじ)”といい、当時、貴重品であったことから茶人が掛物の表装や茶道具の袋として珍重し、それぞれに固有の名称が付けられました。それらを「名物裂」と呼ぶようになり、茶道具の名品、いわゆる“名物”を包む「名物裂」は、幕末から近代にかけて仕覆(しふく)と呼ばれるようになりました。
大名であり茶人としても名を残す、松平不昧(まつだいらふまい)の編纂による『古今名物類聚(ここんめいぶつるいじゅう)』(全十八冊・1789〜1797)のうち、二冊を「名物裂之部(めいぶつぎれのぶ)」としたことからもその貴重さがうかがえます。
写真の『大棗(おおなつめ)』と『仕覆』は、松平不昧伝来の品に明時代の渡来品を合わせたものです。美しい金箔、丸文に双龍を金糸で織り出した金襴など、品格の調和が見られます。展覧会では、こちらをはじめ当時の茶人のセンスを随所に感じられる名品が展示されています。
煎茶道具には古渡り更紗で可愛らしく
「草花文更紗仕覆」「格天井更紗仕覆」「亀甲手更紗仕覆」「菱手更紗仕覆」「巴手更紗仕覆」など
更紗は、当時綿に色彩する技法が日本では確立していなく、洗うとすぐに色が落ちてしまいましたが、主にインドから入ってきた色鮮やかな更紗模様は洗っても色が落ちることがなく珍重されたことから、江戸時代中期までに渡来した一群を“古渡り”と呼び、後に新渡りしたものと区別しています。
茶の湯に名物裂が添ったように、古渡り更紗の鮮やかな色彩とオリエンタリズム溢れる文様は、小さく愛らしい煎茶道具を包むのにぴったりです。
憧れの意匠がもたらした美の広がり
梶川作「桐鳳凰蒔絵箪笥(内、壽字尽、名物裂尽)」江戸時代
国宝 「曜変天目」と二つの名物裂 他
国宝 曜変天目(「稲葉天目」)と「紺地二重蔓牡丹唐草文金地金襴仕覆」と「白地雲文金襴仕覆」
静嘉堂文庫美術館は緑の多い美術館。この季節は紅葉も楽しめます。イベントなどの詳細は下記リンクをご確認くださいね。
【展覧会概要】
『名物裂と古渡り更紗』
会期:2019年11月2日(土)〜12月15日(日)
休館日:毎週月曜日
会場:静嘉堂文庫美術館
開館時間:午前10時〜午後4時30分(入館は午後4時まで)
入館料・イベント等はリンク参照
静嘉堂文庫美術館 展覧会情報