今日は「朔太郎忌」…生誕130年 虹を描いた詩人の十七音
賑やかな夏雲と青空にかかる虹
夏の季語も、それぞれの時期によりその季節を表わす言葉がたくさんありますが、夏全体に見られる景色や気候を表わす季語もあります。その一つが「虹」です。
今日5月11日は、詩人・萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)の忌日です。詩人が詠んだ数少ない俳句の中に、遺稿にも記載された「虹」を季題にした句があります。
詩人の描いた十七音の「虹」と「マボロシ」の関係に目を向けてみると…?
自由詩の租の見たものは何?…「マボロシヲミルヒト」展開催中
新緑に包まれる鎌倉文学館
詩には、短歌や俳句など時数の決まっている定型詩。文章をパズルのように組み合わせた散文。文字数も形式も問わず自由に綴る自由詩があります。それまで、定型詩が主流だった日本において、口語を用いて自由に言葉を綴る自由詩の基礎を築いたのが朔太郎だったと言われています。
今年は生誕130年を迎え、縁の地である、鎌倉文学館では記念展覧会「マボロシヲミルヒト」展が開催中です。
朔太郎が詩に綴った言葉はマボロシだったのでしょうか?それとも、真理のカケラだったのでしょうか?
雨粒と太陽が織りなす「虹」と幻想の都市としての「空」
海と空と雲と…虹!
【虹立つや人馬賑ふ空の上】 朔太郎
朔太郎にとって幻想の都市である、「空」にかかる虹は、孤独な詩人にはずいぶんと賑やかでまぶしいものだったようです。
常日頃から「空」の様子に自分の心を通わせ、日常には見えない何かを、季節や毎日の気象の変化から感じ取って言葉に置き換えていたのではないか?
俳句は写生であり、「今・ここ」を表わすものと言われています。詩人・朔太郎の十七音(俳句)は、その折々の空=『幻想の都市』に写る心の「今・ここ」を綴ったとも言えます。
季語…虹
虹とマボロシ…私たちが見ているものは?
見ごろが待ち遠しい…「大虹」と言う名の紫陽花
雨上がりの空にかかる虹に、私たちはなぜか喜びを感じます。それは単にきれいなものを見た…とうこと以上に、太陽と雨とが作りだす、ひとときの魔法に出会えた喜びなのではないでしょうか。
朔太郎が空に幻想の都市を見ていたように…私たちも虹を見るとき、手に取ることのできない「マボロシヲミルヒト」になっているのではないか…さらに言えば、季節をいつくしむとうことは、移り変わるひとときのマボロシを五感で包み、心に刻むこと。
この夏も、皆さんが多くの「虹」に出会い、心豊かなひとときを過ごせますように…!
《参考文献》
・tenki用語辞典
・鎌倉文学館 開催中の企画展「マボロシヲミルヒト」
・俳句歳時記 夏 角川学芸出版編