日本発祥(?)の「人力車」文化、海外ではどんな歴史をたどった?
中国・北京の歴史的建造物「鼓楼」の、三輪タクシー乗り場
今回はその続編として、海外の人力車、人力タクシー文化についてお届けします。
モータリゼーション「前夜」に盛り上がって消えた、人力車文化
1869(明治2)年、日本で発明されたという説が有力な「人力車」。そのヒントになったのは「二輪馬車」や、中国やヨーロッパで使用されていた「セダンチェア」(人力で運ぶ椅子かご)だったといわれます。ただし、ヨーロッパでは近代化とともに「同じ人間が動力の乗り物」に乗ることへの違和感が生まれ、人力の乗り物は次第にすたれていきました。
日本では、馬車や鉄道に比べ人を雇うコストが安かったこともあり、人力車が大ヒット。明治初期から中期にかけて庶民の足として人気を博しますが、1896(明治29)年をピークにその需要は下降していきます。鉄道や汽船の普及で、人びとの「人力車離れ」が加速したのです。
かつて海外輸出品の花形だった「人力車」
マレーシア・マラッカの街に佇む「トライショー」
しかし、これらの国々でも鉄道や汽船など、新しい交通機関が普及していったのは日本と同じこと。人力車の栄光は長くは続きませんでした。しかし、タイやマレーシア、ベトナム、インド、パキスタン、ビルマなどでは、人力車から派生した「輪タク」(自転車タクシー)文化が発展。自動車タクシーよりも安価な「庶民の乗り物」として、あるいは「観光地の足」として、今も生きながらえています。「リキシャ」「シクロ」「トライショー」などと呼ばれるこれらの乗り物に、海外でお世話になったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
さらに近年では、ドイツ発の自転車タクシー「ベロタクシー」が各地で活躍中。「環境にやさしい乗り物」として、人力で走る乗り物が再び注目を集めているのです。
「人が、人を運ぶ」ことのメリットとは?
観光地でよく見かける「ベロタクシー」
また、アジアをはじめとする諸国を旅する欧米人にとって、ガイドや通訳、ボディガードとしての役割も果たす人力車夫はありがたい存在だったという話もあります。
時代遅れ? 過去の遺物? そんな評価を乗り越え、「エコな乗り物」として再評価を受けつつある人力車。ゴールデンウィークに旅行や行楽を予定されている方は、ぜひ人力車やベロタクシーを試してみることをおすすめします!
安原敬裕・澤喜司郎・上羽博人編著「交通論おもしろゼミナール2 交通と乗り物文化 人力車からジェットコースターまで」(成山堂書店)
参考:齊藤俊彦「人力車の研究」(三樹書房)