明日、4月4日は「獅子の日」です。意外に知られていない、ライオンと人間の摩訶不思議な歴史
ヒッタイト王国の遺跡にある「ライオン門」
獅子(ライオン)の存在は、もともとライオンが生息していなかった地域にも古くから知られていました。
さまざまな神話や伝説にライオンが登場するほか、紋章などにも数多く用いられています。
日本の神社でよく見かける狛犬も、もともとは仏像の前に獅子の像を置く習慣に由来しているのだとか。
お正月の「獅子舞」、それに「唐獅子牡丹」などの文様……。
昔の人たちは、ライオンにどのようなイメージを託していたのでしょうか?
自由で、勇敢で、高貴な生き物
農業化や都市化によって草原が減少するまでは、ヨーロッパや中東など、かなり広範囲に生息していたと言われています。
現代の私たちが想像する以上に、ライオンは身近(?)な生き物だったのかもしれません。
メソポタミアやエジプトでは、ライオンの強さや生命力を「太陽」や「夏」の象徴として捉えていました。
古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、その著作でライオンを「自由で勇敢で高貴なもの」と表現しています。
エジプトのスフィンクスは、ライオンの身体、人間の顔を持つ神獣。
ギリシャ神話のグリフォンは、ライオンの身体と鷲の頭部、蛇のしっぽを持つ怪獣です。
一方、インドの神さまヴィシュヌは、半人半獅子の姿に変身し、魔神を退治します。
人間離れした強さ、この世のものではない不思議な力。それらを表現するのに、ライオンのイメージが用いられたのかもしれません。
「強いライオン」のイメージを利用した人びと
旧約聖書に登場する預言者ダニエルは、ライオンのいる洞窟から無傷で生還します。英雄や王族がライオンを仕留めた、という伝説も多いですよね。
古代文明では、ライオン狩りをはじめ、捕獲してペットのように飼いならすことも行われていたようです。
強いライオンを打ち負かす、何事もなかったように振る舞う……そのような姿から、その人物の「強大な力」を誇示したのでしょうか。
また、ライオンは、何かを「守護する」シンボルとしても多く用いられました。
英国王家の紋章、ヴェネツィアの象徴として名高い「有翼の獅子」。街や王宮、一族を守るシンボルとして、建物の入り口に獅子の像をしつらえたり、装身具として身に着けたりしたのです。
仏教とともに日本に伝わった「獅子」
西から東へ、ライオンから獅子へ
その中国では、すでに漢の時代には西方世界からライオンの存在が伝わっていました。そして、龍や鳳凰とともに「神獣」として扱われるようになっていったのだそうです。
ちなみに「唐獅子牡丹」の由来は、メソポタミアやエジプトが起源とされる「唐草文様」と、そこに描かれていたライオン。西から東へと、長い時間をかけて伝わるうちに、中国を代表する花「牡丹」、そして聖なる獣「獅子」を描いたものへと変化していったのです。
アジアのいろいろな地域で行われている「獅子舞」の文化も、「どうやって広まったのだろう?」なんて想像すると面白いですね。
こんど動物園に行った時は、ライオンがちょっと違って見えるかもしれません!
参考:渡辺政隆日本語版監修「100の知識 トラやライオンたち」(文研出版)
利倉隆「絵画の中の動物たち」(美術出版社)
MIHO MUSEUM編「獅子と狛犬 神獣が来たはるかな道」(青幻舎)