「プレアデス星団は6人の兄弟?」「カシオペア座は船の錨(いかり)?」。日本とアジアの星物語(秋編)
「六つ星」「群がり星」などの呼び名もあるプレアデス星団
中国や東南アジア、インド、そして太平洋の島々……それぞれの文化や風俗、宗教と結びついた、太陽や月、星々にまつわる伝説をご紹介しました。
西洋世界とはちょっと違う世界観、宇宙観にふれていただけたのではないでしょうか。
空気が澄んで、星空観測には絶好の季節が到来。
今回は「秋編」として、この時期に日本からよく見える星を中心にセレクトしてお届けします。
北海道から沖縄まで、プレアデス星団の呼び名と伝説
「すばる」の呼び名は、「統ばる」(自ら集まる)という古語に由来しているのだそう。
肉眼では6~7個の星の集まりが見えるため「六つ星」「六連星(むつらぼし)」「むづら」「六連珠」「六地蔵」などと呼ぶ地方もあります。
長野や山梨の一部では、一升ますにあふれるほど星が群がっている、ということから「一升星」という呼び名が。
このほか「群がり星」「鈴なり星」などと呼ぶ地方もあるそうです。
アイヌの伝説では、プレアデス星団は神さまによって星に姿を変えられた娘さんたちです。仕事を怠けたこらしめに、寒い季節が近づく頃に空に昇ってくるようになったのだとか。
沖縄の八重山地方では、「むりかぶし」(群れる星)と呼ばれるプレアデス星団。
言い伝えによると、「むりかぶし」は昔、天の神さまに命じられて島を治めていました。
島全体を見渡すとともに、自らの位置で種まきや収穫の時期を知らせていたのです。
アジア各地に伝わる、プレアデス星団にまつわる物語
争いごとに心を痛めた王女さまの提案で、兄弟はプレアデスの6つ星に。王女さま自身は、金星に姿を変えたのだといわれています。
タイでは「ダオ・ロオク・ガイ」と呼ばれるプレアデス星団。
ニワトリの雛の群れに見立てられているのですが、こんな伝説が残っています。
僧侶に献上する食事になろうと、自ら鍋に飛び込んだ雛たち。
その功徳をたたえるため、仏さまが天空に昇らせ、星になったのだそうです。
ポリネシアのクック諸島に伝わる伝説では、プレアデス星団ははじめ、一つの星でした。
あまりに明るく輝いていたせいで、タネという神さまの怒りを買ってしまいます。
タネ神は、アウメア(おうし座のアルデバラン)とメレ(おおいぬ座のシリウス)に命じて、プレアデスを追いかけさせました。そうして、とうとう6つに割れてしまったプレアデスは、「タウオノ(ポリネシアの言葉で「6」の意味)」「マタリキ(「小さな目」の意味)」と呼ばれています。
有名なカシオペア座、あなたは何に見えますか?
Wの形をしたカシオペア座と天の川
日本では、船の碇(錨)に似た形をしていることから「いかり星」と呼ばれてきたカシオペア座。「山形星」という呼び名もあるそうです。
アラビアでは、夜空に輝くカシオペア座を、「手」のかたちになぞらえ、「ヘナで染めた手」と呼んでいました。
これは、お祝いごとの際に、天然染料のヘナで手や手の指を染める習慣(10月31日配信「イレズミ(タトゥー)」の記事に、ヘナタトゥーの写真が掲載されています/下記リンク先参照)からきているそうですよ。
秋の星々にまつわる物語、いかがでしたか?
ちなみに、おうし座の一等星アルデバランの名前は、アラビア語で「後に続くもの」という意味があるそう。
プレアデス星団の後に続いて天に昇って来ることからついた名前で、日本でも「すばるのあと星」と呼ばれていたそうです。
11月26日には、月がアルデバランを隠す「アルデバラン食」が起こります。興味がある方はぜひ調べてみてくださいね。
参考:「アジアの星プロジェクト」海部宣男監修「アジアの星物語 東アジア・太平洋地域の星と宇宙の神話・伝説」、林完次「宙の名前 新訂版」「星のこよみ」