台風情報は進化している!秋の登山に役立てたい台風の知識
一方、太平洋高気圧が退くことで日本列島にはたびたび台風が近づくようになります。これまでも台風による遭難事故がたびたび発生し、少なくない方が亡くなっています。今回は、山岳における台風の危険性について解説します。
台風接近 山の上では平地以上に風が強くなる
CDの中心の穴を台風の「眼」だとすると、最も風雨が強く、厳しい現象が起きやすいのが眼のすぐ外側を取り巻く「アイウォール」と呼ばれる積乱雲の周辺です。中でも台風の進行方向の右半分は危険半円と呼ばれ、左半分に比べると風が強まる傾向があります。
一般に、風速15メートル以上で風に向かって歩きにくくなり、風速20メートルを超えると何かにつかまっていないと立つことさえできなくなります。台風の強風域が平均風速15メートル以上、暴風域では平均風速25メートル以上(それぞれ地上の風速が基準)になりますから、台風接近時の登山がいかに危険かわかるかと思います。
温帯低気圧化=衰弱ではない
台風が温帯低気圧に変わるということは、低気圧として弱くなったことを意味するのでしょうか。それは正しくありません。台風が温帯低気圧に変わるということは「熱帯低気圧の特徴」が失われて「温帯低気圧の特徴」を持つことであり、強弱の変化とは無関係です。むしろ、温帯低気圧としての特徴である「前線」が発生することで、強い風の吹く範囲が広がったり、再び風が強まったりする場合があります。
気象庁の台風情報は徐々に進化している
平成21年にはそれまで3日先までだった進路予想が5日先まで発表されるようになりました。そして平成31年には強度予報と暴風警戒域の予想も5日先まで延長されるようになり、より先の未来の予報を詳細に確認することができるようになっています。
またスーパーコンピュータシステムの計算能力の向上や予報技術の進歩に伴って、台風の進路のブレ幅も小さくなったことから、予報円の大きさも小さくなる傾向です。予報円とは、70パーセントの確率で台風の中心がその中に到達すると予想される範囲のことです。予報円の大きさが小さくなるということは、進路の予想にぶれが少ないということになり、予想の信頼性が高いことを意味します。このように台風情報は年々進化しており、現在も新しい技術の試行錯誤が続いています。将来はさらに精度の高い情報が発表されることになるかもしれません。
台風情報を上手に使って、この秋も安全な登山を楽しんでほしいと思います。