お花見会場にも出現! 「怖い、悪い」カラスの意外な事情とは…
実は、カラスは人に良くなつき、ものマネも得意なひょうきんもの。
ゴミ置き場を荒らし、通行人を威嚇し、道路や線路でいたずらをし。雑食性で何でも食べて狡猾で知能が高く繁殖力も強い。まさに無敵で凶暴だよね…そんな憎々しいイメージで語られることが多いカラス。
でも本当にカラスってそんな生き物なのでしょうか。
筆者が子供の頃は、商店街の店先などにカラスを飼ってる人がいて、九官鳥やオウムのように人間の言葉をモノマネしていてかわいいなあ、と思ったものです。いつからカラスはこんなにも嫌われ者になったのでしょう。
怖い! でかい! 日本のcrow
日本で一般的に見られるのはハシブトガラス、ハシボソガラスの二種類。どちらも小型カラスcrowに分類されます。
では、日本のカラスは小さいの? それがそんなことはなくて、日本を訪れた外国人に、「日本のカラスが大きくていっぱいいて怖かった」と印象的に語る人がよくいるそうです。ハシブトガラス、ハシボソガラスとも日本のカラスは大陸の同種よりも大型のようなのです。
特にハシブトガラスはワタリガラスとそう変わらないくらいに大きくなります。これは生物の島嶼化現象ともいわれ、大型の生物は小型化するのに対し、鳥のような目方の軽い生物は逆に大型化する傾向がある事を言います。日本は島国ですので留鳥が「島嶼化」している可能性があるのです。実際、カラスだけではなく、鳩や雀などの留鳥も、大陸のものよりも大きいようです。
それに加えて、日本の都市部ではえさが豊富なこと、また、ハシブトガラスは多くの国では山奥に住んでいて都市部で見かけることはあまりなく、都市化している日本のカラスに、余計に驚いてしまうのかもしれません。
やっぱり日本のカラスは「大きくて怖くて無敵」なのでしょうか。
謎のカラスの大量死
けれども実際には、雑食で悪食だからこそ、腐敗し雑菌まみれの食物を口にして腸炎に罹り死んでしまうことは、カラスはよくあることのようなのです。
過去にも、秋田県や神奈川県の足柄町などでカラスの大量死は起きていますし、経験が浅く免疫力も弱い若鳥は、毎年相当な数が死んでいます。
また、カラスに襲われた、という事件も、カラスが繁殖期に入り子育てをしている警戒感の強い時期に集中しています。
ゴミの分別収集が分岐点
そう、実はカラスの都市進出が、人間との摩擦、イメージ悪化の一番大きな要因なのです。
1990年代、ゴミの分別回収が各自治体で徹底され始め、分別のために黒いゴミ袋から透明な袋に変わっていきました。するとカラスがゴミ袋の中の食べ物を容易に目視できるようになり、その結果ゴミ捨て場荒らしをはじめるようになったのです。それに伴って苦情が激増したのです。
東京都環境局では苦情の増加を受けて平成13年からカラスの捕獲殺処分、巣の撤去などの処置を行い、またゴミ袋をカラスが透視できないように改良するなどして、都内にいたカラスはおよそ3万6千羽から半分以下に減り、苦情もピーク時の4000件近くから、今では500件ほどに激減したそう。今のカラスたちは、一時期ほど抱負に生ゴミをあされず、決して恵まれているわけではありません。埼玉のカラスたちの餓死も、ちょうど年末年始の寒くエサの少ない時期。実はカラスはかなりシビアなサバイバルに晒されているのが現実なのです。特に各自治体が駆除・排除に乗り出してからは、厳しい生活を送っているようです。
参考:http://www.env.go.jp/nature/choju/effort/effort6/effort6-1/ref05b.pdf
イメージは最悪、でもよくみると…
昔から美しい髪を「カラスの濡れ羽色」と表現し、三本足のヤタガラスを信仰してきた日本人。邪険に遠ざけるだけではなく、興味をもって観察することから共存するヒントが生まれるかもしれません。