豪雨がもたらした傷跡 広島・岡山の現地の状況
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今回の記録的な豪雨で被害を受けた地域では、厳しい猛暑という過酷な条件のもとで復旧作業が急がれています。日本気象協会では、7月10日から12日にかけて広島県と岡山県の土砂災害・浸水害の現地調査を行いました。
◆土砂災害(土石流)の現地調査
国土地理院ウェブサイトに一部加筆
広島県では7月6日(金)の夜のはじめごろ(18時から21時ごろ)線状降水帯が継続してかかり、19時39分には広島県に大雨特別警報が発表されました。土砂災害や浸水害が広い範囲で発生し、今回の豪雨で亡くなった広島県の方は100人を超えています。
日本気象協会では7月10日・11日の2日間で、広島市安佐北区口田南、広島市安芸区矢野東、熊野町川角の3箇所の土砂災害の状況を調査しました。
【広島県】広島市安佐北区口田南付近の状況(7月10日調査)
広島市の北東部に位置する安佐北区は、山地が多く自然に恵まれた場所である一方で、度々土砂災害の危険にさらされてきた地域です。4年前の「2014年8月豪雨」でも大規模な土石流が発生しましたが、今回の災害もほぼ同規模の、大規模な土石流が発生しました。山の谷筋に沿って土石流が発生しており、現場は「土のにおい」を強く感じました。さらに、流れてきた土砂などが川の流れをせき止めて、本来の河道とは違うところに新たな流路が発生していました。(これは平成29年九州北部豪雨において、福岡県朝倉市でも見られた現象です)
調査団は、口田南3丁目付近のコンビニから歩いて調査を開始したのですが、このコンビニは生鮮品などの商品不足が多少みられるものの営業をしていて、付近の風景に異常さはあまりありません。どこで土石流が発生しているのか、しばらく歩みを進めないとわからないのです。数分歩くと、道路への砂の堆積が徐々に増え、現場にさしかかると突然大きな石や岩が目に入ります。災害現場から数百メートル離れると日常が広がっているのに、現場は雰囲気が一変するのです。土砂災害の調査に慣れている調査員でも、毎回驚き、恐怖を感じます。
【広島県】広島市安芸区矢野町東付近の状況(7月11日調査)
広島市の東部に位置する安芸区にある矢野地区は、ほかの広島市域とは陸地で接しておらず飛び地になっています。調査で訪れた矢野東付近は東と南が山地となっており、土石流だけでなく、住宅地を流れる矢野川の護岸が削られて崩落している箇所が多数ありました。調査当日も多くの住民が詰まった土砂を取り除く作業をしていました。
【広島県】熊野町川角付近の状況(7月11日調査)
熊野町は広島市や呉市に近いことからベットタウンとして発展した、四方を山々に囲まれた熊野盆地が広がる地域です。調査に訪れた川角では、安佐北区や安芸区と同様に、大規模な土石流が発生した形跡がありました。調査当時、まだ行方不明の方の捜索が自衛隊と警察の方々を中心に行われていて、重機やスコップによる手作業で土砂を取り除く作業をしていました。リーダーと思われる方が隊員に向けて、「あと10分で休憩入れます。もうひと踏ん張り頑張ろう」と声をかけ、猛暑の中作業を続ける隊員を激励していました。
大雨時の避難として住居の2階に避難する「垂直避難」を呼びかけることがありますが、土砂災害では2階の斜面反対側で身を守ろうとしていても、土石流の直撃をまともに受けてしまうと命の危険を伴います。
今回調査を行った3地域の被害は、土砂災害の危険があらかじめある箇所として「土砂災害警戒区域」または「土砂災害特別警戒区域」に指定されている範囲内で発生していました。土砂災害の危険がある地域では、大雨時には基本的に早めに域外への「退避避難」を行うことが一番です。
◆浸水害の現地調査
国土地理院ウェブサイトより
岡山県にも、広島県と同時刻に大雨特別警報が発表され、高梁川上流域にあたる岡山県北部で広島市東部と同程度の雨が降りました。岡山県では60人を超える方が亡くなり、その多くが倉敷市真備町の方でした。日本気象協会では、7月12日に岡山県真備町付近にて浸水害の状況を調査しました。
【岡山県】倉敷市真備町の状況(7月12日調査)
国土地理院ウェブサイトに一部加筆
真備町は倉敷市のベッドタウンになっており、平野部には高梁川の支流である小田川が流れ、町の南東端で高梁川と合流する地形になっています。この小田川と、その支流である高馬川と真谷川で堤防が決壊し、真備町市街地の約4分の1が浸水しました。
小田川の決壊地点近傍では激しい氾濫流により一部家屋が流失等の被害を受けていましたが、市街地では浸水の被害を多く受けていました。多くの家屋で浸水深が4~5メートルと2階床上の窓部分や2階屋根下まで達していました。家財保全行動によって2階に上げた家財も多くが被害に遭ってしまったと思われ、市内では大量の水害ゴミが積まれていました。市街地では、住民が手作業で泥の掻き出しやごみの搬出を行っていました。
連日の厳しい暑さにより、被災地域で熱中症になる方が増えてきています。被災者だけでなく、ボランティアの方も、復旧作業に注力するあまり、熱中症になってしまう方が多いようです。こまめな休憩(例えば20分作業したら10分休憩するなど)と、水分・塩分補給(休憩のたびに汗をかいた分しっかり補給)を忘れずに行ってください。「体の様子がいつもと違う」と感じた場合は、無理をせずに周囲の方に伝えるのが大切です。
被害にあわれた方々に心よりお見舞いを申しあげるとともに、被災地の一日でも早い復旧を日本気象協会職員一同、心よりお祈りいたします。
[日本気象協会]気象予報士 熱中症予防指導員研修講師
安野 加寿子
「人生は一度きり」と、夢を抱いて転職を決意。理系OLから気象予報士の道へ!日本気象協会入社後関西支社勤務を経て、現在はtenki.jpチームにて活動中。tenki.jpのコンテンツづくりや管理・運営...
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