カタルーニャのピアノの詩人 ── フェデリコ・モンポウPR
ガウディ、ピカソ、ダリなどの偉人を数多く輩出したスペインの街角
今回は、そんな物憂い時季にピッタリともいえる、詩的で美しい旋律が印象的な、スペインの作曲家フェデリコ・モンポウをご紹介しましょう。
スペイン音楽の持つ憂愁と官能性
スペインの、とある教会の鐘
もともとスペイン音楽は独特の民族色が強く、「1000人の優等生を生む代わり、に一人の天才を生む」とも言われます。キリスト教とイスラム教の要素がまじり合い、またジプシー的な世俗的・民謡的な音楽の要素も強く、独特の憂愁を帯びた、官能的な響きを作り出していますが、スペイン国民楽派の旗手といわれるグラナドス(エンリケ・グラナドス・イ・カンピーニャ )や、スペインの作曲家のファリャ(マヌエル・デ・ファリャ・イ・マテウ)などが有名ですね。ギター音楽が多く作られているのも特徴です。
さて、モンポウは、教会の鐘職人の息子として生まれました。
若い頃にはパリで過ごし、作曲をほとんど独学で学びます。彼は、ひどく内気な性格で、フランスの大作曲家ガブリエル・フォーレへの紹介状を持っていたにもかかわらず、フォーレに面会するために控えの間で待っているうちに、気後れして帰ってしまった、というエピソードが残っています。第二次大戦中にバルセロナに戻り、生涯その地で暮らしました。
演説ではなく、打ち明け話
遠い花火を見ているような、モンポウの和音の響き
ドビュッシーやサティを連想する人も多いでしょう。ただ、ロマンティックな面では近代フランス音楽にも共通しますが、モンポウの音楽は、フランス風の風景を描写する楽想より、自分の内面を見つめるような親密な印象があります。彼の音楽を形容した「演説ではなく打ち明け話」という言葉が残っています。
また、おそらく少年時に聞いた、自宅での鐘の複雑な響きが影響しているのだと思われますが、モンポウの和音の響きは独特です。不協和音一歩手前のような、それでいて繊細な響きがあるのですが、派手な響きや押しつけがましいところはなく、BGMのようにして聞くこともできるでしょう。それはまるで、遠い花火を見ているような気分にもなります。
モンポウ:ピアノ曲全集(4枚組)
── 彼自身が弾いたピアノ曲全集が輸入盤ながら比較的廉価で手に入ります(Brilliant Classics)。You Tubeでも晩年の姿を見ることができますし、日本のピアニスト熊本マリさんも多くのディスクをリリースしています。
梅雨の一時、モンポウのピアノ曲を聞いて、彼のひそやかな「打ち明け話」を聞いてみてはいかがでしょうか。