オチ無し、アンハッピーエンド、リアル過ぎるストーリー…ご存知ですか?「ニューウェーブ映画」
1960年代のニューシネマ以来のムーブメント!?
それまでハリウッドでは、大手映画製作会社やスタジオが製作する、殆どロケはなく、セットによるスタジオ撮影が主流だったそう。美男美女達が恋をしたり冒険をしたり…最後はもちろんハッピーエンド。暴力や流血、性的な描写等はご法度でした。でも、若い映画作家や俳優達(デニス・ホッパー、ピーター・フォンダ等)はこんなのは現実ではないと、自分達でカメラを持って、外へ飛び出し製作し始めたのがいわゆる「ニューシネマ」です。不良や犯罪者といった社会のはみ出し者がヒーローだったり、バイオレンス描写を多用したり…また当時の様々なタブーも映画の中に取り入れていきました。当時、アメリカはベトナム戦争・人種問題・ドラッグなど様々な社会問題が存在していました。そんな現実とハッピーエンドで終わる映画があまりにもかけ離れていたのかもしれません。
社会や大人への不満で鬱屈していた若者たちが、自分達と等身大の若手映画作家達の作る「ニューシネマ」に飛びつかないわけがありません。ニューシネマは次々とヒットを飛ばし、ひとつのジャンルを築きました。
この頃日本映画界では黒澤明監督がすでにリアルな描写でハリウッド映画より一歩先をいっていたのですね。いまでも黒澤明監督に影響を受けたという映画監督が世界中にいるのも納得です。
そんな「ニューシネマ」台頭後、ハリウッド映画は全盛期に。数十年が経ちまた映画界に「ニューウェーブ映画」という新たなムーブメントが起こっているようです。
ダメ人間が主人公。どんでん返しもありません。
しかし現実はどうでしょうか。戦争、世界的不況、格差社会、テロの脅威…様々な社会問題が増え続けています。
アメリカで「ニューウェーブ映画」というものが作られるようになったのがイラク戦争後の90年代後半からと言われています。代表的な監督は、トッド・ソロンズ(1959年生まれ)、ニール・ラビュート(1963年生まれ)。それぞれ代表作は「ハピネス」「ベティサイズモア」どちらの映画もちょっと常識からは逸脱したキャラクターが主人公。そんな主人公を辛辣に、時には意地悪に描写していきます。そしてそんな主人公達は最後まで常識的行動をとるわけでもなくキャラクターもそのまま、映画は終わります。ブラックユーモアと納得できない(?)結末で終わってしまい、私たち観客は取り残されてしまいます。一言で言うと後味の悪い映画なのです。
でも考えると現実とはそんなものではないでしょうか。自分とは考え方が違い分かり合えない人はいるし、一生懸命生きていても理不尽な事は起こるものです。そして全てに答えがあるわけでもありません。予定調和なストーリーに飽き飽きしていた一部の映画ファンから絶大な支持を得ているのかもしれませんね。
ニューウェーブ映画、どう楽しめば良いのでしょう?
映画はエンタテインメント「なんでわざわざお金を払って後味の悪い映画を観なくちゃいけないの?」と思う方もいると思います。また映画の主人公に感情移入して「あるある!」経験をするのも映画の楽しみ方ですが、ニューウェーブ映画には感情移入できる登場人物が出てこないのも特徴。では一体どうやって楽しめば良いのでしょうか?
筆者もわかりません。でも、勝ち組・負け組と白黒ハッキリさせたがる殺伐とした近年の世の中。そんな価値観、どこ吹く風でダメ人間やちょっと逸脱した人物が気ままに生きていく様は見ていてある意味痛快なのかもしれません。そしてそんな人物達が主人公だからこそ予定調和的なストーリーにもならず物語の展開が読めません。現実とはそんなものだよ、と私たちに教えてくれているのではないでしょうか。
今年のアカデミー賞作品賞受賞の「バードマン」、助演男優賞受賞の「セッション」などもアンハッピーエンド、大きな意味でニューウェーブ映画にカテゴライズされるかもしれません。
ハリウッド超大作(も、もちろん面白いですが)などに飽きたなぁという映画好きの方にはお勧めの「ニューウェーブ映画」。年末年始のお休みにゆっくり楽しむのはいかがですか。