令和のはじまりの日。これから紡ぐ新しき時代
日本最古の歌集・萬葉集が典拠となり、名付けられた「令和」
出典は、日本最古の歌集「萬葉集」巻第五から。「梅花の歌三十二首」の序に綴られた“初春の《令》月にして、気淑く風《和》ぐ”の《令》と《和》から「令和」と新時代の元号は命名されたのです。
《令》という文字の成り立ちを、新潮日本語漢字辞典で紐解いてみると、「神官が礼帽を目深に被り、跪いて神意を聴く形。神のお告げの意を表す。法令、布告の意となり、神意に従う意から、善い意となる」とあり、「令」の上半分は集めるの意、下部分は人の跪く姿を表したようです。
一方《和》は、「和らぐ、和む意を表す。和やか、安らかの意となり、叶う、応える、従う意に用いる」とあり、人の声に応えて唱和する意を表すという意味合いが。
文字そのものの成り立ちはさておき、新元号である「令和」の本義は、萬葉集研究の第一人者・中西進氏によると、「うるわしき平和」なのだとか。令嬢や令名など、敬称に使われる「すばらしい」という意味合いをもつ《令》。日本の異称でもあり、日本風を表し、争わないで仲良くするという意味合いの《和》。これら2つの文字が一つになった「令和」が指し示す新しい時代は、どのような時を刻むのでしょうか。
いにしえびとが詠んだ和歌は、言霊のさきはふ国の祈り
「言霊」という言葉を用い、「言霊のさきはふ国」「言霊のたすくる国」とも歌ったのが、万葉の歌人たち。四季折々の森羅万象の中で言霊を信じて生きる人々が、ときに喜び、ときに嘆き、ときに幸福にひたり、ときに大きな哀しみに翻弄され、揺り動かされた心よりほろこび出て花開いた古代の歌。人を支え、思いを形にしてくれる五七五七七・三十一文字の定型で成り立つ歌は、昔も今も変わらない人々の祈りであると思えてきます。
歴史とは、上手に思い出すこと。歴史とは、己を知ること
――これは、批評家・小林秀雄が最晩年に綴った「流離譚を読む」からの一文です。昭和も平成も過ぎ去った今、続く令和はどんな時代になるのか。そんな問いへの一つの回答は、歴史に学び、過去に倣うこと。令和という新しい未来は、私たち一人ひとりがよりよく生きることでこそ、よりよき時代へとつくりあげられていくものなのかもしれません。