梅雨早くも明けて「文月」。一挙に暑さも盛りの夏の到来!?
稲の穂がふくらむ月、星に詩歌を捧げる月、「文月」
文月の名の語源は諸説あり、あまりはっきりしないようですが、一つめは、7月7日の七夕の節句にちなむもの。七夕の行事における牽牛・織女の2つの星に詩歌を献じたり、書物を開き夜風にさらす風習から文月となったという説です。もう一つは、「含み月」「穂含み月」の意であるとする説。こちらの説では文月は、稲の穂がふくらみはじめる月、「ふふみ月」の転であるという解釈なのだそうです。
文月のほかの別称には、「七夕月」「七夜月」「愛逢月」などさまざま。7日には七夕の節句を迎えますが、短冊と笹を用意してみてはいかがでしょう。家族で願いごとや歌を綴って、江戸時代の風習に倣って、ベランダや軒先に飾ってみるのも一興。例年雨が多い七夕の宵も、今年はもしかしたら晴れに恵まれる予感もします。さやさやと風にそよぐ短冊越しに見上げる夜空に、天の川と牽牛、織女の星々が、きらめいて見えるかもしれません。
7月1日は夏の始まり。海・富士山開き、そして氷室の日
また、金沢では伝統的な行事・氷室の日を迎えます。昨日が「氷室開きの日」で、本日が「氷室の日」となるのですが、これは、旧暦6月1日の氷室の節句に、加賀藩主が徳川将軍家に遠路はるばる氷雪を献上していた習わしが発祥だとか。冬の氷雪を貯蔵していた氷室と呼ばれる小屋を開く行事は、今も金沢の奥座敷・湯桶温泉に伝えられ、金沢の風物詩として多くの人でにぎわいます。
また氷室の日には、氷室饅頭をいただく習慣も。緑、白、赤の3色の饅頭が金沢の和菓子屋で売り出され、人々は列を成し買い求め、無病息災を願いつつ食べるのだそうです。
このほか杏や枇杷、胡瓜、ちくわなどを食べるのも、氷室の日の習慣。食欲も失せるような暑さと湿度が高まる時節に、このような行事があるのも百万石の食文化。その知恵に倣い栄養価が高く、体内の熱を払う食べ物を、積極的に食すのもいいですね。
京都では祇園祭が開幕。軒先に咲く、緋扇の花
祇園祭の花として欠かせないのが、「檜扇(ひおうぎ)」。アヤメ科の植物で、肉厚で剣状の葉が、開いた扇を思わせることからこの名に。この檜扇で悪霊を退散させたことから、厄よけにこの花を軒先に飾っているということです。さて、一日花である檜扇の花の光沢ある黒い種子が、万葉集でよく歌枕になっている「ぬばたま」。ぬばたまのぬばは、黒色を表す非常に古い言葉。黒髪だったり夜などの黒い様が、数々の歌に詠まれています。