バナナそっくりの木「芭蕉」実は食べられないってご存知?
ダイナミックな形の「芭蕉」の花
このようになんとも生命力あふれるダイナミックな様子からか、能「芭蕉」の内容は、植物の「芭蕉」の精が現れ、人間同様、植物でも「成仏」したいと願い出るというもの。 こうした植物の精が登場する能は他に、梅、藤、桜(西行桜)、柳(遊行柳)と、いかにも日本的な風景に合いそうな植物たち。その中で、芭蕉だけは異質でインパクトがあります。
密接に文化や生活に結びついた「芭蕉」
バナナの葉の工芸品
一方同名のアイテムを金角・銀角兄弟も持っていますが、こちらは仰ぐと炎が噴き出すと言う、鉄扇公主のそれとは反対の効果を持つもの。ちなみに、 ドラえもんに登場する「バショー扇」は、西遊記ががモデルというひみつ道具で、柄のダイヤルを調節することで、台風からそよ風まで自在に起こす団扇です。なんと温度や匂いまで調節できてしまうというのだから面白いですね。
日本では、繁殖するその性質からその歴史は古く、江戸時代には多く観賞用として植えられていました。また、沖縄では13世紀頃にこの植物を用いた工芸品が作られていました。なかでも芭蕉布と呼ばれる織物が特に有名で、かつては沖縄の全地域で織られ、庶民の衣服、労働着として夏冬問わず着用されておりました。その繊維は、涼しくて丈夫。かつては琉球王国がその生産の推進をするほどの重要産業でしたが、糸芭蕉の繊維を用いて織り上げる芭蕉布は、着尺一反を織るのに約200本以上の芭蕉が必要です。 芭蕉布が出来上がるまでには23の工程を通じた大変手間をかけた織物です。
残念ながら、現在では安価かつ短時間で生産できる化学製品に押され、今ではほとんど作られることはなくなってしまいました。1974年には国の重要無形文化財として、この布作りが登録されており、現在でもその保護と普及に取り組んでいます。また、布以外にも紙作りの原料になったり、布作りに適さない葉の部分は沖縄各地の獅子舞の獅子の毛として使われています。
江戸時代前期俳諧師「松尾桃青」の俳号「芭蕉」の由来は⁉
古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音
閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉(せみ)の声
数々の名句を残した「芭蕉」の俳号の由来には諸説あります。芭蕉が江戸深川に構えた庵の号は、当初は「草庵」と呼ばれましたが、そこに植えた芭蕉の木が立派に生長して名物となったことから、弟子達がこの庵を「芭蕉庵」と呼ぶようになり、これを受けて天和2年(1682年)、師匠は戯れに自らを「芭蕉」と号するようになったという説があります。「芭蕉」は戯号(戯れに使う号)であるため、改まった場面で使われることはなく公式な場面で使う主たる俳号は「桃青」でした。もともとは、「芭蕉)は別号の一つ。しかし桃青という名も、憧れの詩人であった唐の「李白」を元にした俳号であり、「梨」と「白」で「李白」と号すなら、(未熟な)自分は「桃」と「青」で「桃青」と号す、というもじりだったことから、「芭蕉」がいずれもユーモアと才能あふれた芸術人だったことがこのエピソードからもうかがい知れます。
この寺は庭一盃の芭蕉かな 芭蕉
ちなみに芭蕉の季語は初秋。芭蕉の薄い葉が大きいにも関わらず秋風に吹かれ破けてしまいもののあわれを誘うためではないかとのこと。葉がさけてしまっている芭蕉を「破芭蕉(ヤレバショウ)」というようです。