長距離移動でも問題なし! 進化する鉄道のトイレ事情のいま!
長距離の区間を走る東海道本線
自動車、鉄道、飛行機と移動手段はそれぞれありますが、長距離でも安心して移動できるポイントのひとつにはトイレの充実があるでしょう。中でも鉄道のトイレは、設置当初から改良が重ねられ、今では当たり前の設備となっています。鉄道のトイレの進化はどのようなものだったのでしょうか?
鉄道にトイレがなかった時代
今も残される旧新橋駅跡
しかし、開通した電車はトイレなし。案に相違してトイレなしの鉄道は、やはりいろいろな問題を引き起こしました。がまんできない乗客が鉄道に乗ったまま外に向けて用を足すという(これはきっと男性ですね、笑)、とんでもない行為が相次いだのです。耐えられないとはいえ、この行為は罰金に相当するものでした。
その後、さらなる悲劇が起こりました。鉄道は延伸され、より長距離の運行となりました。1889年、宮内省の肥田浜五郎氏が藤枝駅で途中下車してトイレに行ったところ、鉄道はすでに発車しかけていました。慌てて飛び乗ろうとした肥田氏は転落死というなんとも悲しい結末を迎えてしまったのです。そして、この政府高官の死によって、鉄道のトイレ設置を求める声が強まっていったのです。
批判の嵐から高性能なトイレへ
ですが、また新たな問題が浮上したのです。
それは、当時の鉄道のトイレが垂れ流しだったことに関係します。垂れ流しというこは必然的に線路に汚物がたまり、悪臭が発生します。衛生的にも大問題だ……ということで、この問題は「黄害」と名付けられます。その結果、鉄道の汚物処理は適切に行わなければいけないと法的に規制されるに至ったのです。
法的規制によって、鉄道のトイレ設備の技術は急速に加速していくことになりますが、そのひとつが、タンクに洗浄水と汚物をためこむ「貯留式」。あるいは、洗浄水をろ過してくり返し利用する「循環式」など。いくたびにわたって改良が進められ、鉄道のトイレは進化していきます。
そして、現在の主流は「真空式」と呼ばれるもの。圧縮した空気の力で吸引するため最小限の水量ですむことがポイントになっています。ここまで読んだ方はわかると思いますが、そう、流すときに聞こえる「ゴーッ」という勢いある音こそ、鉄道のトイレの進化の証だったのです。家庭のトイレでは聞こえないあの音は、さまざまな改良や創意工夫の賜物だったのですね。
乗客に優しいトイレに進化
2015年にリニューアルされた特急「サンダーバード」
関西と北陸を結ぶJR西日本の特急「サンダーバード」は、一部車両で身体障がい者対応トイレに温水洗浄機能付きの暖房便座を導入。さらに、2017年3月に運行を開始したばかりの小田急電鉄「ロマンスカー・EXEα」、こちらも多機能トイレに便座開閉ボタンをつけるなどより快適なものに進化。座席だけでなく、トイレも快適にという鉄道各社の配慮がうかがえる設備に進化しています。
―― 5月に運行を開始したばかりのJR東日本「四季島」をはじめ、豪華列車が続々と登場している近年。鉄道の進化とともにトイレもさらに進化していくかもしれませんね。