七十二候<土潤溽暑〜つちうるおうてむしあつし〜>植物も汗をかき、人は恋する
「草いきれ」は、蒸れた草の息づかい
虫たちの営みを感じて愛でているかも
ですが、たとえ不快や危険を感じても、その場からぴゅ〜と逃げられないのが植物のつらいところ。日頃どれほど多くのストレスにさらされていることか! そして、もっともこたえるもののひとつが「夏の暑さ」…じつは植物にも体温(葉温)があるのです。「ちょっとエアコンの効いた屋内へ」というわけにはいかない自然界の草たちは、おそらく人間以上に「猛暑つらすぎるわ〜」と感じているはず。なのにずっと戸外でじっとしていて、熱中症にかかったりはしないのでしょうか?
葉っぱで汗かき、UV対策!どうやって?
気孔に見つめられているような…
植物の一大事・光合成には、太陽を浴びることが不可欠。ですが、あまりに陽射しが強烈だと葉っぱの体温が急上昇(やっぱり熱中症に!?)。高温すぎてタンパク質である酵素がはたらかなくなり、光合成もできなくなってしまうのです。そこで、葉っぱは気孔を開き、蒸散させて体温を下げます。これが植物たちの汗なのですね! 目には見えませんが、ためしにポリ袋をかぶせると、袋の内側にはこまかい水滴が。「草いきれ」を草の息と考えるならば、犬が体温調節のため舌を出してハアハアする、吐息のイメージでしょうか。そしてこの蒸散は打ち水のような効果をもたらすといわれ、地球温暖化対策の「緑のカーテン」でも活躍中です。
さらにUV対策も。紫外線を葉っぱの表面で反射・散乱させ、葉の表側の細胞には、紫外線を吸収する物質を含んでいます。って、なんと私たちが日焼け止めクリームを塗るのと同じ仕組みですね! それでも細胞の中に入り込む紫外線が活性酸素(←人間の老化やガンの原因にもなる、こわい物質)をつくった場合、それを消去する仕組みまでもっています。それが、カロテンやアントシアニン、リコペンなどの抗酸化物質。植物は太陽を浴びるほど、活性酸素から身をまもるために、これらの物質を多くつくります。その結果、葉や花や実は、より鮮やかな色になるというのです。紅葉や夏野菜の美しい色は、植物が紫外線と闘った証しだったのですね。
熱気ムンムン、が日本の夏でもあり。
情熱のギャルみこし☆ムンムン
同じ性質を持ったものが一カ所に集まってつくる「いきれ」。熱気の中でがんばっている植物たちは、葉っぱの言葉でお互いを励ましあっていることでしょう。人の発する体熱で息苦しく不快な状況をあらわす「人いきれ」も、じつはヒト同士の見えない連帯感が隠れていたりして?
太陽を浴びて汗をかき、集まってムンムンとエネルギーを発散させ、励ましあう。それが日本の夏らしい過ごし方なのかもしれませんね! 暑さも後半戦。どうか体温調節をこまめになさって、熱中症にはくれぐれもご注意くださいませ。
打ち水でクールダウンしませんか♪
『ふしぎの植物学』田中修(中公新書)