カタツムリの殻をとったらナメクジになる!? 七十二候<梅子黄(うめのみきばむ)>
殻はシェルターのみならず。振り回して敵を撃退!?
寝ているけど落ちません♪
カタツムリの殻の表面には微細な溝があり、汚れにくくなっています。油性ペンで落書きしても、水をかければすぐ落ちてしまうほど。すばらしいですね! このしくみは、住宅の外壁や水回りなどに応用されているそうです。肌身離さず家を持ち歩いているカタツムリですから、人間以上にマイホームの美観にはこだわりがあるようです。
そして防御のためだけでなく、攻撃にも殻を使用するカタツムリがいることが確認され、話題になりました。北海道大学の研究報告では、エゾマイマイが殻をぶんぶん振り回して天敵のオオルリオサムシを撃退する様子も! まったりイメージしかないカタツムリが豹変する衝撃映像?をご覧になりたい方は、関連リンクをどうぞ。
雨の日にはコンクリートを食べているって本当?
きみはオトナなのかな?
さらにカタツムリは、コンクリートまで食べているらしい!? 雨の日にブロック塀にカタツムリが集まっているのは、雨水がわずかに溶かしたコンクリートを口でけずりとって食べるためだというのです。炭酸カルシウムを主成分とする殻を維持するため、みんなで栄養補給していたのですね。そして、鳥たちにさかんに食べられるカタツムリ。カタツムリがたくさんいる地域の野鳥は、卵の殻が厚くて丈夫なのだそうです。カタツムリは自然界の貴重なカルシウム源。ときには、死んだ仲間の殻をかじってリサイクルすることもあるそうですよ。
カタツムリのあかちゃんは、カタツムリの形をしています(生まれながらの家持ちでした)。ちっちゃなカタツムリが、コドモなのかそういう種のオトナなのか、見分けるヒントはあるのでしょうか。カタツムリの殻は成長につれて巻き数が増え、入り口が反り返って分厚くなっていくものが多いそうです。殻の入り口に注目してみてくださいね。また、殻には右巻きと左巻きがあり、巻きが違う相手とは交尾できないなどの影響もあるといいます。出会ったカタツムリの殻からいろいろ想像するのも楽しいですね。
なんとタコやイカにも殻がついていたようです!!
イカの過去を語る?オウムガイ
カタツムリやナメクジには『広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)』という寄生虫がいる場合があることが知られています。触ったら手を洗い、葉野菜などに虫が歩いたようなぬめり跡があるときはその部分は除いて、できるだけ加熱調理するようにしましょう。
巻き貝が進化の過程で殻をなくすことを「ナメクジ化」と呼びます。殻がなければ、狭い隙間にもつっかえることなく入り込めて隠れ場も豊富! 殻のためのカルシウム補給も不要! 重荷(殻)を背負っていないので、移動もラクラク! その結果、活動範囲が広くなり、畑や庭を越えて人々のプライベート空間(畳の上やらバスルーム、キッチンの野菜など)に足をのばして嫌われちゃったわけですね。身軽な反面、体丸出しで敵の攻撃や乾燥にさらされやすいという弱点も。とっさに逃げ込む場所を確保する対応力も求められそうです。
「ナメクジに塩をかけると溶ける」といわれるのは、浸透圧で水分が体から抜けて縮んでしまう現象。ナメクジの体は水分が9割なので、溶けてなくなったように見えるのですね。フリーズドライ食品みたいに、水をかければ元に戻ります(ちなみに砂糖をかけても縮みます)。
そしてなんと! 軟体動物のタコやイカも、海の中でナメクジ化した貝の一種だというではありませんか。頭から足が生えているように見える「頭足類」というグループで、オウムガイなどもその仲間です。頭のように見えるのは、かつて貝殻の中に入っていた部分。本当はお腹です。つまりタコやイカは、オウムガイのような貝が進化の途中で殻をなくした生きものだったのですね。じつはカタツムリの殻の中も、ひっこめた体をおさめる空間は殻の口から一巻きほど。あとの部分には内臓が入っているのです。「カタツムリの殻をとったら人工的にナメクジ化できるのでは?」なんて、ゆめゆめお考えになりませぬよう…。
熟した梅の実。眩しいですね!
<参考>
『カタツムリの謎』野島智司(誠文堂新光社)
『カタツムリ観察ブック』小田英智(偕成社)
『北海道大学 PRESS RELEASE 2016/11/14』(北海道大学総務企画部広報課)