ウナギのお刺身がないのは「毒があって危険だから」ってご存じでしたか?

ウナギの握り寿司。たしかにお刺身はのっけないようです
毒のある血液をもつウナギ族!

知られざる身近な毒物☆
これはフグ毒とは別物で、即命を落とすほど猛毒でないせいか、知らない人もけっこう多いようです。
食品として同じ扱いのウナギとアナゴ(農林水産省的には、ウナギはアナゴより脂肪分が多い。違いはそこだけ!なのだそうです。そ、そんな)ですが、持っている毒の強さもほぼ同じ。血清1mlで、体重20gのマウスを60〜150匹も殺すことができるといいます。
それでは、もし人間が食べるとどうなるのでしょう。
厚生労働省『自然毒のリスクプロファイル』には、「ウナギの新鮮な血液を大量に飲んだ場合、下痢、嘔吐、皮膚の発疹、チアノーゼ、無気力症、不整脈、衰弱、感覚異常、麻痺、呼吸困難が引き起こされ、死亡することもある」との記述が!・・・でも「大量」って、いったい?
単純に計算すると、体重60kgのヒトの致死量は、およそ1000 mlと見積もられるのだとか・・・牛乳パック1本分。つい間違って飲む量ではなさそうですね。
じつは、タンパク質のこの毒は 60℃で5分間加熱すると完全に毒性を失うのだそうです。つまり、普通に焼いたり蒸したりしたものを食べるぶんには食中毒を起こす心配はまずない、ということ。おお!それなら安心して今年も蒲焼きが食べられそうです。ウナギやアナゴのお刺身がない理由もこれではっきりしました。
もっとも、あえてすごい手間ひまをかけて「完全血抜き」したウナギを生食させる(レアな)お店もあるそうです。上物ウナギのお刺身は「鯉の洗い」に似た食感で、独特の甘みがあって絶品なのだとか。フグ感覚でちょっと食べてみたくなりませんか。
じつは「食べる前」のほうが危険?!

ワイルドライフも安全に♬
血が口に入ると、ヒリヒリした灼熱感をおぼえて粘膜が赤く腫れ、よだれが流れるなどの症状が。
傷口に入ると、炎症、化膿、浮腫などが引き起こされます。
目に入ると、激しい灼熱感と痛みで涙が流れ、まぶたが腫れ、結膜炎などが引き起こされ「目に異物が入った感じ」は数日残るのだとか。ひどいときは失明の危険も・・・飲まなくても、じゅうぶん恐ろしいですね!
こうした症例はウナギ調理人の間では有名で、ウナギの取り扱いには知られざる苦労があるようです。美味しい蒲焼きは、ウナギ職人さんたちが体をはって提供してくれる味覚だったのですね。
じゃあ 調理されたものを食べる一般人には無関係なんだ〜と思うかもしれませんが、じつは近年アウトドア・グルメブームで、自ら魚を釣ってさばく人も意外と多くいます。何も知らずに、ウナギの血がついた手で食べ物や肌に触れるとたいへん危険です。
つかまえたウナギをさばくときは、とくに手に傷があるときはビニール手袋などで必ず保護してください。なるべく血が飛ばないように「背開き」がおすすめだそうです。
じつは、ウナギの毒があるのは血液だけではありません。あの「ヌルヌル(←体の表面を守っています)」には、なんと血液以上の毒が!「ウナギのつかみどり」をしたら、手をよく洗うように注意しましょう。
夏休みに川遊びをされる方もいらっしゃるのでは。ウナギにかぎらず、 魚をいじった手でパンやおにぎりをつまんだりしないようにし、釣った魚や食材はしっかり加熱してから食べましょう。寄生虫対策にもなりますね。食中毒対策をしっかりして、安全に楽しく夏を過ごしたいですね。
関西ではウナギを「まむし」と呼ぶという・・・

<隠れた上にのっている>という贅沢品も
・ご飯の間にうなぎを挟んで蒸すことから、「ままむし」→「まむし」となった
・ご飯との間に挟んだ「間ぶし」が「まむし」に転じた
・「鰻飯(まんむし)」が転じた
・蒲焼をごはんにまぶしたことから、「まぶし」→「まむし」となった
「まむし丼」と「うな丼」の違いは、ご飯の上にウナギが<のっている>のが「うな丼」、ご飯の中にウナギが<隠れている>のが「まむし丼」だそうです。
ちなみに、ウナギの蒲焼に山椒をかけるようになったのは、昔の養殖ウナギはエサのせいでかなり臭かったからだといわれています。
「ひつまむし(ひつまぶし)」は、 一杯目はウナギの風味をそのまま堪能! 二杯目は海苔・ネギなどの薬味で上品な味わいに! 三杯目はだしをかけてお茶づけ風にサラサラ~! と3度楽しめるのが醍醐味。
毎年うな重だけど今年は変化がほしいという方は、丑の日に「ひつまむし」を味わってみるのはいかがでしょうか。

今年の丑の日は7月30日。土曜です!
厚生労働省HP『自然毒のリスクプロファイル』
うなぎミュージアムHP(リンクあり)