超巨大竜巻を消滅?! 8月1日公開映画『ツイスターズ』 気象予報士が本気で考える竜巻の倒し方
竜巻を…加熱する?冷却する?切断する?山地を削って更地にする?コリオリの力を弱める?大気の粘度を小さくする?逆回転の竜巻をぶつける?巨大扇風機で風向きを変える?・・・爆破する?・・・
など、気象予報士が本気で検討に検討を重ね、現実には不可能ですが、理論上は可能と思われる方法を考えました。その中から厳選した4つの方法を紹介します!
『ツイスターズ』ストーリー
スティーブン・スピルバーグ製作総指揮
この夏、『ジュラシック・ワールド』製作陣が贈る、アクション・アドベンチャー超大作
富士山より高く、新幹線より速い!
竜巻モンスター VS 人類
地球が生んだ、最強の竜巻モンスター<巨大竜巻>を倒せ!
寄せ集めチームの前代未聞の“竜巻破壊計画”とは!?
『ジュラシック・ワールド』の製作陣が、この夏、新たに創りあげたのは竜巻モンスター<ツイスターズ>。実際の観測データに基づき製作された、リアルかつド迫力な圧倒的パワーで観客に襲い掛かる!
この夏、大スクリーンで360゜スリル体験!
<ストーリー>
気象学の天才ケイトはニューヨークで自然災害を予測し被害を防ぐ仕事に熱中していた。そんな中、故郷オクラホマで史上最大級の巨大竜巻が群れをなして異常発生していることを知る。竜巻にトラウマを抱えたケイトだったが、学生時代の友人ハビからの懸命の依頼で、夏休みの一週間の約束で竜巻を倒すために故郷へ戻ることに。そこで出会った知識も性格も正反対の竜巻チェイサーのタイラーら新たな仲間と、無謀ともいえる“竜巻破壊計画”に立ち向かっていく
作中の竜巻などは実際の観測データに基づいて制作されているという事で、リアルかつド迫力の映像に手に汗を握る展開が続きます。無謀ともいえる危険な「竜巻破壊計画」は、気象学を学んだ人であれば一度は考えたことがあるでしょう。そこで今回は、映画『ツイスターズ』の公開にあわせて、日本気象協会の気象予報士が「竜巻を倒す方法」について本気で考えましたので、その方法について紹介します。
竜巻のしくみ
竜巻は、発達した積乱雲に伴う上昇気流の渦を指します。竜巻の中心部分の風は非常に強く、秒速100mに達することもあり、これは時速に換算すると360kmと新幹線「のぞみ」の最高速度よりも速くなります。竜巻自体の移動速度も速く、時には時速100kmに達することもあります。
竜巻が竜巻であることを維持し続けるには、「上昇気流」の存在が必要です。上昇気流が発生するためには、地上付近ほど暖かい空気が、上空ほど冷たい空気が存在する、という「大気の状態が不安定」である必要があります。
この条件をヒントに、映画『ツイスターズ』にも登場する、最強クラスとなるF5スケールの竜巻を倒す方法「竜巻破壊計画@日本気象協会」を考えました。
竜巻を倒す方法その1「竜巻上部をレンジでチン?!マイクロ波を照射し加熱する」
竜巻が発生・維持するための必要条件である「上昇気流」に着目。地上付近ほど暖かい空気が、上空ほど冷たい空気があるという「大気の状態が不安定」を解消させるという方法です。
上空の冷たい空気を加熱して温度を上昇させることにより、「大気が不安定」の状態が解消し、「上昇気流」も次第に弱まることで、竜巻の消滅に繋がると考えました。
具体的な加熱方法として、竜巻上部にマイクロ波を照射させます。これは、電子レンジと同じ原理で、空気中の水分を1秒間に数億から数十億回も振動させることによって加熱します。ただ、竜巻クラスのスケールになると、電子レンジ程度の大きさでは到底カバーしきれません。
そこで、地上からは巨大なアンテナを搭載した装甲車で、上空からは人工衛星や航空機などで竜巻を包囲し、四方八方から竜巻上部に向かってマイクロ波を照射します。
この方法では、総勢1000機ほどの装甲車・航空機・人工衛星が必要となりますが、その規模で竜巻上部にマイクロ波を照射すれば、上空の空気を十分に加熱することができ、竜巻はその勢力を失い、消滅させることができそうです。
竜巻を倒す方法その2「-196℃の液体窒素で竜巻下部を冷却する」
関田気象予報士と同じく「大気の状態が不安定」を解消し、「上昇気流を弱める」という方法で竜巻を倒しますが、異なるのは「上空の空気を温める」のではなく「地上付近の空気を冷やす」という点です。
空気を冷やす方法は何が良いでしょうか。日本の夏の定番「打ち水」では、到底空気を冷やすことはできないでしょう。大量の氷を使ってもまだまだ足りません。
そこで、マイナス196℃にもなる「液体窒素」を地上付近にばらまく、という方法を考えました。
この場合、冷却対象の空気の範囲などを細かく計算すると、およそ1000トンの大量の液体窒素があれば、竜巻を消滅させることができそうです。
ただし、竜巻の暴風によって、液体窒素が吹き飛ばされることを考えると、常に液体窒素を追加していく必要がありますし、地上に生息するほかの生物にも影響が及びそうなので、なかなか実施することは難しそうですね。
しかし、地上付近の空気を冷やすことができれば、大気の状態が不安定ではなくなり、竜巻の中の上昇気流が抑えられ、竜巻は霧散していくと考えられます。
竜巻を倒す方法その3「数百万台の扇風機で地上付近の風の収束を抑える」
ここでもやはり竜巻退治のキーとなるのは「上昇気流の存在」です。
上昇気流が発生しているということは、その直下の地上付近では風が収束しています。風がぶつかり合うと、行き場を無くした空気が逃げる先は空の上しかありません。そのため、風が集まり収束すると上昇気流が発生することがあります。ということは、風が収束しないようにしてあげれば、上昇気流も抑えることができる(=竜巻を倒すことができる)のです。
扇風機を使って地上付近の風向を変えて収束を抑え、上昇気流を弱めることで竜巻を消滅させよう、というのがこの方法です。
一般的な扇風機1台では到底竜巻には太刀打ちできないでしょう。竜巻を取り囲むように数百万台の扇風機を設置して一斉に稼働できれば、地上付近での風の収束を抑えられるかもしれません。扇風機の向きは竜巻と反対方向にして、風が集まり収束するのをブロックします。
もっとも、竜巻の暴風によって、扇風機が吹き飛ばされてしまう可能性があることや、数百万台分の扇風機の膨大な電力はどう供給するのか?などを考えると、なかなか実施することは難しそうですが、それでも実現すれば、扇風機の力によって竜巻を破壊することができるでしょう。
竜巻を倒す方法その4「巨大な刃物で竜巻を分断する」
竜巻を斬るようなイメージで、凄腕の剣の達人にやってもらいたいアイデアです。
切り裂くというよりは、竜巻に巨大で頑丈な刃物を横から差し込み、物理的に上昇気流を止め、竜巻を消滅させようというのがこの方法です。
この方法にも大きな問題が立ちはだかります。直径1kmの竜巻を分断できるほどの巨大な刃物をどうやって製造するのか?製造できたとして、どうやってそれを運ぶのか?
多数の航空機を稼働させることができれば、もしかすると竜巻本体付近まで運ぶことは可能かもしれませんが、この方法が実現できたとしても、竜巻発生・発達のメカニズムはまだまだ未解明な部分も多く、分断した片方の竜巻は弱まっても、もう片方の竜巻は逆に強まってしまう…ということも起きるかもしれません。
映画本編では、ケイト・タイラー・ハビら気象学の天才や竜巻チェイサーが、ロジカルかつダイナミックな方法で竜巻に立ち向う様子が描かれています。迫力満点の音響と圧倒的な映像で、まるで自分が竜巻の渦中にいるかのような臨場感を体験できるでしょう。大スクリーンでしか味わえない、まさに五感を揺さぶる映画体験を楽しめるはずです。映画『ツイスターズ』は2024年8月1日公開です!
タイトル:『ツイスターズ』
監督:リー・アイザック・チョン(『ミナリ』)
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、トーマス・ヘイスリップ、アシュリー・ジェイ・サンドバーグ
製作:フランク・マーシャル(「ジュラシック・ワールド」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズ)、パトリック・クローリー(「ボーン・アイデンティティー」シリーズ)
出演:
デイジー・エドガー=ジョーンズ(『ザリガニの鳴くところ』)、グレン・パウエル(『トップガン マーヴェリック』)、アンソニー・ラモス(『トランスフォーマー/ビースト覚醒』)他
2024年8月1日(木)公開
©2024 UNIVERSAL STUDIOS, WARNER BROS.ENT.& AMBLIN
ENTERTAINMENT,INC.