来シーズンの花粉飛散予測は!?スギ花粉症の人が今からやるべき『3つの備え』

2018年春の花粉飛散予測 日本気象協会が発表!

花粉の飛散数は、前年の夏の気象条件が大きく影響します。今夏の気象条件から来シーズンの花粉飛散予測を行ったところ、近畿や四国地方より東ではスギ・ヒノキ花粉の飛散量が前シーズンに比べて多くなる予想です。特に、関東甲信、東北、四国地方では、非常に多く飛散する都道府県もある見込みです。来シーズンは、前シーズン以上の花粉症対策が必要になりそうです。
日本人の4人に1人がスギ花粉症?不満の第1位は「完治しない」

今春に実施された「47都道府県『スギ花粉症実態調査』(※1)」によると、スギ花粉症患者の治療や対策に関して最も不満であるとの回答の1位は「完治しない」(53.6%)であり、次いで「花粉を防げない」(11.0%)、「薬を飲むと眠くなる/集中力が低下する」(9.5%)という結果でした。
一方で「ほぼ毎年、病院・医院で受診している」と回答した人は、30.1%であり、「今までに、受診したことはない」人の理由として1位は「市販薬(薬局、ドラッグストアで購入できる薬)で対応しているから」で35.4%、2位は「受診しても治らないと思うから」で30.5%という結果でした。
多くの方がスギ花粉症に悩んでいるにもかかわらず、お医者さんに相談している方は比較的少ないようです。花粉症は本当に治らない病気なのでしょうか?
特別対談 スギ花粉症に悩む気象予報士×花粉症治療のスペシャリスト

昨シーズンの関東地方は「スギ花粉少なめ」。スギ花粉症の気象予報士が選んだ治療法は?

大久保先生:頼もしいですね。河島さんも以前からスギ花粉症に悩まれていたと思いますが、昨シーズンはいかがでしたか?
河島:実は昨年の11月に、以前先生に教えていただいた『舌下免疫療法』の治療を開始しまして・・・昨シーズンの東京では、例年のスギ花粉飛散量に比べて約6割と少なめだったこともあると思うのですが、ほとんど花粉を感じずに過ごすことが出来ました!
大久保先生:河島さんは『舌下免疫療法』の効果がしっかり出ているようですね。ただ、何もやっていない方は花粉が少ないから症状が出ないというわけではありませんし、残念ながらこの先も花粉飛散量がゼロという年はないですから、飛散量が少なかろうと、症状が出やすい方は毎年辛いと思います。
スギ花粉症患者の最も不満なこと「完治しない」・・・この不満は解消できる!?

大久保先生:スギ花粉症は命にかかわる病気ではありませんから、患者さん全員が「完治」を目標に考えなくても大丈夫なんですよ。患者さんそれぞれの症状の出方やライフスタイルによって、治療法を選ぶことが重要です。抗ヒスタミン剤など、シーズン中の『薬物療法』で症状が気にならなくなる方は、治療としてはそれで十分だと思います。しかし薬物療法だけでは症状が改善しない方、薬物療法が副作用等の理由で服用できない方は、QOL(生活の質)が下がってしまいますから、他の治療方法を試すことをオススメしていますね。
河島:完治を目指すには、具体的にどういった治療法がありますか?
大久保先生:スギ花粉症に対する『アレルゲン免疫療法』という治療法があります。スギ花粉を段階的に摂取することで、スギ花粉への体の反応性を変え、スギ花粉症を根本的に治療するという方法です。『皮下免疫療法』と『舌下免疫療法』があり、河島さんが治療中の『舌下免疫療法』は、現在日本では8万人ほどが挑戦している新しい花粉症の治療方法なんですよ。但しスギ花粉が飛び始めると新たに開始することが出来ない治療法なので、今がまさに開始するには良い時期です。
知っておいて損はない?花粉症の人が今からやるべき『3つの備え』

大久保先生:まずは「昨シーズンの自分の症状」を思い出して欲しいですね。スギ花粉症の症状は人それぞれですから、一番症状が辛かったときのことをぜひ思い出してください。そして、来シーズンも花粉飛散量の多少にかかわらず、必ずその症状の出る日があります。ご自身の症状を自覚した上で、次に心がけて欲しいのが「生活習慣や食生活を整えること」、さらに症状が辛く毎年QOL(生活の質)が落ちている・・という方は「シーズン前からお医者さんに相談」して欲しいです。
河島:「生活習慣を整える」までは意識すればどなたでも始められそうですが、自分が果たして「お医者さんに相談」レベルなのか・・と迷う人も多いと思います。私は先生にお会いする機会が幸運にも過去2度ありましたが、舌下免疫療法をはじめるまでに2年かかってしまいました。(苦笑)
大久保先生:花粉飛散シーズンの3ヶ月間(大体2月から4月)、つまり1年の1/4もの間、QOL(生活の質)が下がってしまうのはとても勿体無いことです。例えば15歳に花粉症を発症した人が65歳くらいまで症状に苦しめられた場合、人生のうち通算で約13年分、花粉症によってQOLを下げてしまっていることになります。長い目で見ると、症状が辛い人ほど完治を目指した治療を行ってもらいたいです。ですから、迷っているよりもまずはお医者さんに相談してアレルギー検査から始めましょう!
花粉を飲むのではなく、「体の細胞に花粉を見せる」舌下免疫療法
大久保先生:スギ花粉症に対する舌下免疫療法は、スギ花粉症の原因物質であるスギ花粉の抽出液を少量から舌の下(舌下)に投与していくという治療法です。「体の細胞にスギ花粉を見せる」という感覚だと抵抗感も和らぐと思います。細胞にたくさんスギ花粉を見せることで、「異物ではないんだよ」と体に覚えさせて抵抗性を下げ、体質改善を図るのです。この舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)は、WHO(世界保健機関)が示した見解書(※2)の中でも、症状を抑え・軽減する薬物療法とは異なり、根治が期待出来る治療法として位置づけられています。
河島:なるほど!スギ花粉を異物だと思ってしまうから、体の免疫反応でクシャミや鼻水が出てしまうわけですが、スギ花粉を異物ではないと体に教えるのが舌下免疫療法なんですね。
大久保先生:厚生労働省研究班が舌下免疫療法を行った患者さんに対して実施したアンケート調査結果では、ほぼ8割の患者さんが「症状が改善している」と回答しています。河島さんもご自身で実感されたと思います。
河島:はい!家族や友人にも紹介したいくらいですが、確かこの治療法は年齢制限があるんですよね?
大久保先生:舌下免疫療法を適用できるのが現在12歳以上と決められていますが、より低年齢の子どもにも適用できる舌下免疫療法薬の開発が進められています。小さいお子さんでもスギ花粉症の子が増えていますので、将来を考えると選択肢が増えることは好ましいですね。
※1 鳥居薬品「47都道府県『スギ花粉実態調査』」参考資料
※2 WHO Position Paper Allergen immunotherapy:therapeutic vaccines for allergic disease. Geneva:January27-29 1997
