五稜郭公園の藤棚が見ごろ !! 植物の開花、動物の初鳴きを観測し、気象状況を知る
サクラの次は藤棚が見ごろ。そしてツツジ、スイレン、ハマナス…。五稜郭公園の花暦
藤の花のトンネルをくぐって公園の中へ
五稜郭は江戸幕府によって建てられた洋式の城郭で、今ではお堀の内側が公園になっています。お堀の外周は約1800m。木々の間を縫っての外周は、散歩やランニングにはちょうどよいコースで、市民の憩いの場として親しまれています。
サクラの次に見ごろを迎える藤棚は、正門の近くに位置しています。石垣の間に藤の花のトンネルがあり、そこをくぐって公園の中へと進みます。そんなに規模の大きい藤棚ではありませんが、藤の花とともに、ツツジやスイレン、ハマナスなどが次々と咲き、今ごろの五稜郭公園では北海道の遅い春を存分に楽しむことができます。
植物の開花、鳥の初鳴きなど、生物の観測が季節の移り変わりの手がかりに
今年のアジサイの開花はいつ?
「桜前線」という言葉に象徴されるように、これらの観測結果はマスコミを通じて報道され、私たちの暮らしの身近な情報としても利用されています。
観測される植物は、サクラをはじめ、ウメ、アジサイ、イチョウ、カエデです。植物に関しては標本木があります。
一方、動物は、ウグイス、ツバメ、モンシロチョウ、ホタル、アブラゼミを観測しています。ウグイスとアブラゼミは初鳴日、ツバメとモンシロチョウとホタルは初見日を記録します。
植物は動かない標本木があるので観測は楽ですが、動物の、しかも初見日を観測するときは、現れそうな日が近づいてきたら、気象庁の職員が観測場所へと通う日々が続くそうです。
地方では独自の生物も観測。南の島ではデイゴ、北海道ではライラック
デイゴの花はもう開花しました。
広島ではシバの発芽やサルスベリの開花、トカゲやシオカラトンボの初見、名古屋ではススキやカキの開花、エンマコオロギやツクツクホウシの初鳴き、京都ではシロツメクサやヤマブキの開花、ヒグラシやモズの初鳴き、横浜ではクワの落葉やツバキの開花などを観測しています。
南のほうを見てみると、南大東島ではデイゴやテッポウユリ、リュウキュウコスミレの開花、那覇ではケラマツツジの開花、クロイワニイニイの初鳴き、クロイワボタルやオオシオカラトンボの初見など、南の島ならではの生物を観測しています。
一方、北のほうを見てみると、札幌ではライラックの開花、カエデの紅葉、イチョウの発芽などを観測しています。
観測される生物には地方色があらわれていて、私たちの生活に根づいている生物が選ばれているようです。
函館の気象台では、植物11種、動物6種。姿を消す動物も…
キアゲハもそろそろお目見え。
植物の標本木は気象台の敷地内にありますが、サクラだけは五稜郭公園のサクラも標本木になっています。
毎年観測していると、姿を消してしまう生物もいます。古くはコウモリとハルゼミ。これらの記録は1956年に途絶えたままです。エンマコオロギは2001年に、カッコウは2002年に、函館地方気象台の周辺から姿を消しました。これらの原因は温暖化などの気象状況の変化というよりは、宅地化が進むなど、森林伐採などによるものと見られています。
〈参考:北海道新聞2016年5月16日号22面 道南版「気候変動 動植物でたどる。函館地方気象台の生物季節観測」〉
植物の開花日などのずれは地球の温暖化によるものと思われる一方、動物の観測については都市化が進むなど、生息環境の変化が原因と思われます。毎年、植物や動物を観測していくことで、気象の変化や環境の変化がわかる、気象庁の「生物季節観測」。生き物たちの営みは、私たち人間のふるまいを反映する鏡であるといえるかもしれません。