北海道の街路樹 「ナナカマド」。冬でも赤いままの実は、鳥たちの大切なごちそう !!
葉も実も赤くなるナナカマド。一足早い紅葉が、青い空に映えて美しい。
秋になると赤い実と葉が美しい !! 多くの市町村の木に指定されている身近な木。
葉が緑のときから赤く色づく実。やがて葉も赤くなり、全体が真っ赤になる。
ナナカマドの名前の由来は、7回かまどに入れても燃えつきることがないほど硬くて丈夫な木であることからきています。バラ科の木で、夏は白い花が咲き、秋になると実が赤くなります。赤い実がついたあとは、霜が降りるころから、葉が赤く紅葉します。上の写真のように、葉も実も真っ赤に色づくときが、まさに見ごろです。
花言葉は「慎重」、「賢明」など。このイメージから、交通事故がなくなることを願って街路樹として植えられている、という説もあります。
ナナカマドは日本中の山に生えていて、特別珍しい木ではありませんが、北海道では、旭川市、室蘭市、紋別市、稚内市などで市の木に指定されているほか、羅臼町、洞爺湖町、幌加内町、白老町など、多くの市町村の木に指定されています。街路樹として多く植えられているので、北海道民にとってはとても身近な木です。
〈参考:北海道水産林務部 森林環境局 森林活用課 木育推進グループ「道内各市町村の木と花」〉
雪が降っても赤いままの実。なぜ冬でも腐らずに赤くいられるのか。
赤い実をほおばるキレンジャク。4~5年に1度、群れで渡来する不定期な冬鳥。
フランスのある研究者が、冬でもナナカマドの実が腐らないことを不思議に思い、その理由を調べてみました。すると、ナナカマドの成熟していない実に含まれるソルビン酸という成分によって、実が腐らない、ということを発見しました。ナナカマドの実の中の真菌や細菌が、ソルビン酸を乳酸などの栄養と間違えて取り込んだあと、菌が死滅してしまうので実が腐らないのです。熟した実にもソルビン酸は含まれていますが、鳥たちが食べても影響はないそうです。食品業界では、このソルビン酸のしくみを利用して、細菌やカビの増殖を防ぐ保存料として使用されています。
〈参考サイト:中小機構「自然から学ぶアイデアの源泉 ネイチャーテック」、ナナカマド 赤い実の秘密〉
冬の赤い実は渡り鳥の大切なごちそう !! 交通安全にも役立っている街路樹。
ツグミのお食事タイム。「10月にシベリアからやってきました。冬でもナナカマドがあってよかった !!」
写真のツグミは、北海道をはじめ、日本全国にやってくる渡り鳥の代表選手で、10月上旬、ちょうど今ごろ渡ってきます。庭のバードテーブルにリンゴなどを置いてやると、気さくに食べにきてくれたりします。
真冬になって、虫や木の実がなくなってくると、腐らないナナカマドは鳥の貴重な食料になります。スズメやカラスも食べにきます。渡り鳥が群れで食べにきて、食べ散らかされ、道路がつぶれた赤い実で汚くなることもありますが、大目に見てください…。
一般に街路樹の役目は、ドライバーから見て走行路線がわかりやすい、車道と歩道をはっきり分離する、防風・防雪になるなど、交通安全のうえでもとても重要な役割を担っています。ナナカマドは鳥のごはんになるだけでなく、街路樹としてももちろん、立派に役に立っています。
北海道のナナカマドは、今、ちょうど赤い実をつけています。冬でも赤いままの実は、今年も鳥たちの食料となることでしょう。本州などでも、南天やハナミズキ、クコなどがそろそろ赤く色づくことです。
日ごろ、何気なく見ていたナナカマドですが、その赤い実には、厳寒の冬をたくましく乗り越える秘密が隠されていたとは驚きですね。