天気図の基本を解説!山の天気を詳細にイメージしようPR
前回は週間予報と週間天気図で1週間先の天気を見ましたが、予定日の3日前の段階になると、天気予報、予想天気図、高層天気図といった資料が出そろい、より詳しく天気を調べることができます。今回は、これらの資料を駆使して天気を読む練習をしてみましょう。
天気マークを見たら、必ず天気図も確認
まず、登山天気のポイント予報で天気マークを見ると、11日は「雨時々曇」で、どうやら天気が良くないようです。一方、翌12日から13日には晴れマークが見られ、12日は登山指数も「A」。晴天が期待できそうです。
この天気マークは、どのような要因によるものなのでしょうか。予想天気図を見てみましょう。11日9時の24時間先予想図では、本州付近に低気圧が予想されています。この低気圧の影響で、11日は雨が降るようです。翌12日9時の48時間先予想図では、この低気圧が三陸沖に抜け、西からは高気圧が近づく予想になっています。そして13日9時の72時間先予想図では、高気圧の中心が北海道にあり、本州付近をすっぽりと覆っています。このため、12日から13日の好天は、移動性高気圧によるものだと考えられます。
登山指数では12日が「A」となっていますが、予想図を見ると高気圧が日本の真上にあるのは13日の朝です。12日の朝の段階では低気圧と高気圧の間の等圧線が本州付近でやや混んでおり、山の上では風が強めに吹くかもしれません。
高層天気図でより深い天気の世界に
tenki.jp登山天気で見ることができる高層天気図(予測)は次の3種類です。
・「極東地上気圧・風・降水量、500hPa高度・渦度」
・「極東850hPa気温・風、700hPa上昇流・湿数、500hPa気温」
・「極東850hPa相当温位予想図」
多くの場合、上空の気圧の谷が深まれば、対応して地上では低気圧が発達しやすくなります。逆に、気圧の尾根が張り出せば、地上の高気圧が勢力を強めます。登山の際は、気圧の尾根が日本付近で張り出しを強めるタイミングを目安の一つにすると良いでしょう。今回の場合は、12日から13日にかけて、日本付近では気圧の谷が東に抜け、気圧の尾根が張り出しています。これに対応して、地上では高気圧が東進しています。ただ、尾根のすぐ西側には次の谷がひかえていて、そこから正渦度の領域(網掛け部)が日本列島に延びています。13日の西日本付近には「L」マークがあり、ここに気圧の谷があることを示しています。
このことを踏まえて、「極東850hPa気温・風、700hPa上昇流・湿数、500hPa気温」を確認します。上段が上空5500m付近の気温と上空3000m付近の雲の広がりを示し、下段が上空3000m付近の上昇流や下降流の強さ、上空1500m付近の気温と風の様子を示しています。
「極東850hPa相当温位図」は、上空1500m付近の空気の流れを示し、数値が高いほど空気が温かく湿っています。湿った空気が直接ぶつかる山域は、雨が降りやすく、雨脚が強まることもあります。
自分なりのイメージを作る
上空の気圧の尾根が張り出すので、高気圧に覆われる北日本を中心に晴れる所が多くなる見込みです。太平洋側には高気圧の縁を回って北東の湿った風が吹き、低い雲が広がるかもしれませんが、上空は乾燥しているので山頂部の雲は少なく、高山からは雲海が見られる可能性があります。一方、冷たい空気を伴った気圧の谷が12日から13日にかけて、近畿や東海、関東に予想されています。これらの地域では雲が広がるかもしれません。北アルプス南部でも雲が広がる可能性があることも念頭に入れつつ、12日に入山し、13日に涸沢カールに登る計画を立てました。
ただし、ここまでは、あくまで3日前の資料をもとに組み立てた予想です。高層天気図の資料は、午前と午後の1日2回更新され、資料の内容は更新されるごとに少し変わる可能性があります。常に最新の資料を確認するようにしましょう。12日午前に発表された資料を見ると、近畿から関東の気圧の谷が前の資料より深まる傾向がありました。天気が悪い方向へ変わる可能性があります。
天気の予想では、自分の解析に絶対の自信を持たないことも大切です。天気は、いくつもの要因が影響しあっていて非常に複雑です。気象のプロである気象予報士でも読み間違えることがあるくらいですから、自分の予想に絶対の自信を持つことは禁物です。必ずtenki.jp登山天気などの天気予報とすり合わせるようにしましょう。
では、当日はどんな天気になったのか、次回お伝えします。お楽しみに!