東京都庭園美術館で堪能する、エキゾティックなアール・デコ
1910年代から30年代のフランスに花開いたアール・デコ
庭園美術館正面
今回の展覧会では、エキゾティシズム、すなわち異国情緒に焦点が当てられています。両大戦間期の当時のフランスでは、驚きと憧憬に満ちた異文化との出逢いが、美意識や造形に大きな影響を与えました。ロシア・バレエが瞬く間にパリで大人気となり、ツタンカーメン王墓が発見され、シトロエンの自動車によるアフリカとアジアふたつの横断プロジェクトが遂行されるなど、新しい時代の風が到来します。そして1931年に開催されたのが、パリ国際植民地博覧会でした。
会場には、植民地を持つ欧米5カ国によって、各地域の特徴をアピールするパビリオンが並びました。キャッチフレーズの通り「一日で世界一周」気分の博覧会は、文化人による植民地主義への反対も浴びましたが、押し寄せた多くの人々にとって初めて、異郷の人々や文化と出合うきっかけとなりました。その生き生きと輝く自由な造形や色彩に、多くの芸術家が、革新的な価値を見出し触発されて、新しい作品を生み出します。今回の展覧会では、フランスの美術館所蔵の国内初公開作品を中心に、それらの逸品が展示されています。
疾走する美神、ナンシー・キュナード
庭園美術館新館テラス
しかしのちに、彼女はアメリカ出身の黒人ピアニストと恋におち、人種差別と立ち向かうことになります。ナンシーは持ち前の反骨精神で、人間の尊厳、平等、自由を世に問うために書籍を出版し、世界の人々に訴えました。アフリカの文化を深く愛したナンシーのポートレートの姿は、コレクションした木や骨、象牙のネックレスやブレスレッドで纏われています。
「黒いヴィーナス」から「虹の部族」へ、ジョセフィン・ベイカー
展覧会は、稀有な空間に解け合う美しい美術工芸品のほか、エキゾチックながらも新しい造形発見への喜びに満ちた彫刻や絵画が揃い、見所満載です。また、ある時代が、見る者の視点によっては光にも影にも転換するという、歴史の陰影に富む展覧会でもあります。館内には広い庭園やテラスを眺めることのできる、レストランやカフェも配置されています。まもなく見頃になりそうな紅葉に囲まれて、アール・デコをじっくり味わってはいかがでしょうか。同展は、2019年1月22日〜3月31日まで、群馬県立館林美術館に巡回します。
庭園美術館日本庭園