江戸の火消し事情は?間もなく秋の火災予防週間
火事を告げる半鐘
火事と喧嘩は江戸の華
火の見櫓
しかし火事は絶えず、特に振袖火事とも呼ばれる1657年の明暦の大火は、江戸城本丸をはじめ市中を焼き尽くしました。防火体制の整備を痛感した幕府はその後、定火消(じょうびけし)と呼ぶ幕府直属の消防隊を創設し、役屋敷も与えます。最初は麹町半蔵門外、飯田町、市谷佐内坂、御茶ノ水の4か所。そののち、増減を経て10組前後になります。各屋敷は火の見櫓を設け太鼓、半鐘、板木などを備え、与力、同心、火消人足を擁していました。
鳶職は火消しもお手の物
家屋を引き倒すための鳶口
町火消は自治組織として町奉行の監督下にあり、お抱えの鳶人足などへの手当と消防器具の経費は、すべて町方負担でした。ポンプなど無かった江戸時代の消火は、周辺や風下の家屋を壊して延焼を食い止める「破壊消防」。火消の用いる道具は、ものを引っ掛けて倒す「鳶口(とびぐち)」や、押して倒す「さすまた」などでした。
そこで、本来建築職人である鳶職人が、町火消の中心となっていきます。もうお分かりでしょうが、「鳶口」を持っていたことから鳶・鳶職と言われる彼らは、任侠な気風をもつ江戸っ子。喧嘩っ早く、実話をもとにした歌舞伎の『め組の喧嘩』でも、縦横無尽の大暴れを見せてくれます。各組の目印であり、また火事の際の消火ポイントを示す「纏(まとい)」持ちは、人気の花形。浮世絵にも多数描かれています。
住宅防火 7つのポイント
消防の伝統は受け継がれています
<3つの習慣>
○ 寝たばこは、絶対やめる。
○ ストーブは、燃えやすいものから離れた位置で使用する。
○ ガスこんろなどのそばを離れるときは、必ず火を消す。
<4つの対策 >
○ 逃げ遅れを防ぐために、住宅用火災警報器を設置する。
○ 寝具、衣類及びカーテンからの火災を防ぐために、防炎品を使用する。
○ 火災を小さいうちに消すために、住宅用消火器等を設置する。
○ お年寄りや身体の不自由な人を守るために、隣近所の協力体制をつくる。
昔も今も、ご近所との協力と、町ぐるみの防火が大事なことは変わりませんね。町によってはそろそろ、拍子木の音とともに「火の~用心」の夜回りの声が聞こえてくる頃。どうやらこの夜回り習慣も、遠く江戸の町火消設立の際の「町の夜回りと火の用心を心がけるべし」とのお触れが由来だそうです。
さあ、今夜も、火の用心!
参考文献:
西山松之助 (編集)『江戸町人の研究〈第5巻〉』吉川弘文館
「日本大百科全書(ニッポニカ)」小学館