ルイ・ヴィトンの原点は緑の森の中?旅を巡る展覧会
©LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat
「荷造り用木箱製造兼荷造り職人」としてのスタート
©LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat
創業者ルイ・ヴィトンは1835年、14歳でスイスの国境近い東フランスのジュラ山脈地方の故郷の村を離れ、2年後にようやくパリに辿り着きます。ここで、レイティエ・アンバルール(荷造り用木箱製造兼荷造り職人)の見習いとして雇われるのです。そして1854年、彼は自分の店を創業。著名人から高い評価を得たそうですが、下積みに長い時間をかけているのですね。
ルイ・ヴィトンといえば旅行鞄ですが、彼が最初に作り上げた、頑丈でありながら軽く機能的なトランクが、現代のラゲージのはじまりだったのです。ブランド誕生から現在までのエピソードが、物語性豊かな展示によって、豊かに広がるエキシビションです。
素材と技法への愛に満ちた展示ストーリー
©LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat
トランクの製作では、内側のフレームの組み立てにポプラ材を、補強材にブナ材を使用し、内部には、害虫予防に樟脳(しょうのう)の木や香りの良い紫檀の木を使ったとのこと。
そんな展示を見ていると、強烈な既視感が現れてきます。それは日本の木工職人のこだわりや彼らの歴史との、普遍的な相似性が連想されるからでしょうか。
時代とともに変化する旅の様式をいち早く創造
©LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat
トランクや鞄が当時のファッションとともに陳列されている展示が示すのは、ヨーロッパ近代のリゾートの歴史でもあります。旅が一般大衆のものとなると、重厚なトランクから鞄へと、旅行鞄も軽量化されていきます。製品として生み出された、洒落たピクニック・トランクやクーラーボックスを見ていると、日本の茶箱や重箱が思い出されるのです。
このメゾンが21世紀以降、一層ファッションやビューティ、そしてアートを志向していく推移が示された後、最後に訪れる部屋は、まさに「インスピレーションの国、日本」。ここでは、ルイ・ヴィトンは伝統とモダンな感性を調和させながら、日本とは独特な関係を保ってきたと明かされています。
日本の工芸世界と共振する究極のクラフツマンシップ
©LOUIS VUITTON / Jeremie Souteyrat
ガストンールイ・ヴィトンは、日本の刀剣の鍔(つば)をコレクションしていたそうですし、日本の「紋」がルイ・ヴィトンのモノグラムに大きく影響を与えていたといわれています。
木工への職人魂を原点として、究極のアーティスティックな世界まで技術を極めたこのメゾンの世界は、日本のものづくりと親和性が高いことを、改めて認識できる内容でした。会場の最後では、職人による工房での作業の実演や製作映像そのものも、アートのように美しく体感できます。
一級のハイエンドブランドとしてのルイ・ヴィトンの魅力を、改めてたっぷりと堪能できるこの展覧会。紀尾井町は、風格ある街並みの中にも、再開発が続き活気のあるエリア。会場へは、豊かで瑞々しい並木道が続きます。奥深いカルチャー体験ができるこのエキシビションは、6月19日まで。入場は無料です。